ネット・プロモーター経営


本レポートは、『DIAMONDハーバード・ビジネス・レビュー』オンラインサイトDHBR.netに掲載された下記記事の中身を一部再編集してまとめたものです。

第1回 中国のアップルストア: 彼らが偽造出来ないもの
第2回 その調査票は、顧客に回答時間を取ってもらうだけの価値があるか
第3回 顧客からのフィードバックを 報酬に反映させることの危険性
第4回 その評価方法は信頼されているか? 報酬に反映させる上での前提条件
第5回 顧客の怒りを感動に変えた ジェットブルーの驚くべき対応
第6回 情熱あふれる従業員が 働きやすい会社とは
第7回 黄金律から利益を創出する
第8回 従業員を情熱的な支持者に変える
第9回 顧客を歓喜させることの価値
第10回 CEOが必要とする、確かな顧客ロイヤルティデータ
第11回 無一文にならずに顧客ロイヤルティを獲得する
第12回 顧客志向の組織をつくる ネット・プロモーター・「システム」 



中国のアップルストア: 彼らが偽造出来ないもの

2011年7月、中国の偽アップルストアに関して、ちょっとした混乱があったのをご存知だろうか?

自身を「BirdAbroad」と称する1人のブロガーが、あのアップルストアとほとんどそっくりな小売店を発見した。らせん状の階段を備え、壁にはアップル社製品が並び、スタッフは青いTシャツを着てアップルの名札を付けている。では、なにが問題なのか?その店舗は、中国の南西端にある都市、昆明にあったのだ。アップルがこれまでに中国で出店した地域は、北京と上海のみのはずだ。

まもなく、熱心な調査員たちが中国中にある偽(シャンツァイ)アップルストアの実態を暴き始めた。このエピソードは、中国において商標やその他の知的財産を守ることの難しさを物語るケーススタディとして扱われるようになった。

ただ我々が思うのは、本物のアップルストアと偽アップルストアは、少し比べただけですぐに判ってしまうのではないかということだ。なぜならば、決して本物のアップルストアの真似をできないであろうポイントがあるからだ。それは、顧客への真の献身である。

アップル・リテール-本物のアップルストアの運営母体-は、すべての顧客に最高の体験を提供するために多大な投資を行ってきた。新入社員は、3週間のトレーニングを経て初めて顧客とひとりで接することが出来るようになる。「当社を友人や同僚に薦める可能性はどのくらいありますか?」と問いかける顧客調査を定期的に実施することで、ストアマネージャーに店舗のパフォーマンスに関するデータやコメントが絶え間なく届く。ストアマネージャーは、不満を持つ顧客全員に電話をかけ、何がいけなかったのか、どのようにすれば改善できるのかを究明する。

これらの電話の内容や顧客からのコメントは、店舗スタッフの指導とフィードバックの際に極めて重要なメッセージとして店舗スタッフに伝達される。フィードバックは、すべてのシフトの打ち合わせ(アップル内では「日次ダウンロード(daily download)」と言われる)において従業員間で必ず確認され、確実に彼らの日常業務に反映されるようになっている。

アップル・リテールは、端的に言うと「ネット・プロモーター・システム」の先進的な実践者である。他のNPS導入企業と同様に、アップルは「当社を友人や同僚に薦める可能性はどのくらいありますか?」という質問に対して0~10の点数で顧客に採点してもらう。9点または10点(薦める可能性は非常に高い)と答える顧客は推奨者であり、0~6点と答える顧客は批判者である。ネット・プロモーター・スコア(推奨者の正味比率、NPS®)は、単純に顧客に占める推奨者の割合から批判者の割合を差し引いたものである(図1)。


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企業が導入するネット・プロモーター・システムにより、顧客が提供したフィードバックが数時間後には店舗スタッフに届くようになっている。店舗スタッフは、推奨者を創造するために自分が何をしたのかを学ぶ喜びを体験し、なぜどのように批判者を生み出すことに加担してしまったのかをすぐに知ることもできる。アップルは、学習を計画的に迅速にすることで、単なる豪華な看板、ガラスの階段、偽者のロゴでは真似できないような顧客からの信頼やロイヤルティを従業員が獲得することを支援している。

アップル・リテールの使命は、顧客の生活を豊かにすることであり、その達成度合いを測るためにNPSが活用されている。アップルがNPSのスコア測定を始めた2007年時点では同社は163の店舗を構えており、全体のネット・プロモーター・スコア(NPS)は58%であった。今日1、アップルは320以上の店舗を構え、NPSは70%と非常に高い。最高点を誇る店舗は、90%以上のNPSに到達している。しかしながら、評点そのものはフィードバックや学びほど重要ではないとしており、それにより従業員は正しいこと-ミッションを達成すること-に集中することができる。

実際、それはうまく機能している。アップルのNPSの統括チームは、推奨者の熱烈な支持の背景にある理由を体系立てて理解するために、すべての店舗のフィードバックを収集し分析している。アップルの商品や店舗デザインが推奨者の熱狂の主な理由であると思われがちであるが、推奨者が満足する主な原因のほとんどは店舗スタッフの応対である。

当然のことながら、素晴らしい顧客体験を創り出すことにおけるアップルの成功は、利益ある成長への大きなチャンスをもたらした。典型的な家電販売店が1平方フィート当たりおよそ1,200ドルを売り上げるのに対して、成熟したアップルストアの売上は1平方フィート当たりおよそ6,000ドルを越えるとされている。これは、どの種の小売店舗よりも断然高い生産性である。また、この数字は店舗での体験に触発されたオンラインの売上を除いているため、実際よりも低めに出ていることは間違いないだろう。

中国にある偽のアップルストアだが、まだ閉鎖していないとしても彼らが撤退するのは時間の問題だろう。彼らが本物のアップルストアと面と向かって勝負をする必要が生じた時、到底かなわないからである。



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