日経産業新聞 ベイン寄稿記事 【連載】経営コンサルの現場から ~結果を出す組織への道~ (全30回)


本書は、 2014 年7 月8 日から 8月 27 日の日経産業新聞に掲載された寄稿記事の中身をまとめたものです。

(1)業績改善、まずは戦略
(2)戦略と組織の橋渡し
(3)すり合わせ重視の弊害
(4)有効性、日本企業見劣り
(5)決断の経験足りず
(6)戦略共有と責任の明確化
(7)人材教育と判断基準 重要
(8)組織設計の青写真
(9)4つの要素で策定
(10)収益源泉を基準に
(11)本社の役割
(12)意思決定プロセス設計
(13)経営陣と現場の溝埋める
(14)文化や価値影響大きく
(15)3つの補助的要素
(16)テクノロジーの重要性
(17)経営トップの仕事
(18)妥当性、恒常的に確認
(19)適合度合いを評価
(20)モデル設計、5つの行程
(21)重要項目に絞り要件抽出
(22)組織評価は定期的に実施
(23)設計原則を決め、順守する
(24)骨格や役割分担を固める
(25)検討の際、留意すべき3点
(26)従業員を変革に巻き込む
(27)陥りがちな落とし穴
(28)逆戻りや失敗の原因
(29)ハードとソフト 並行改革
(30)目標に向かって突き進む


(1)業績改善、まずは戦略

「経営トップにとっては戦略よりも戦略を実行する組織のほうが問題だ」。最近、このような意見を聞くこともありますが、本当にそうでしょうか? 先日も「海外の会社を複数収したのはいいものの、それらの会社はどのような組織体制で運営したらよいのだろうか……」と、ある国内大手メーカーの経営トップから突然、切り出されました。国内事業の下に海外事業を配置するか、それとも海外市場で勝つために国内事業と海外事業を別ユニットにするかというわけです。

会社の組織について経営トップと話をすると共通した課題に突き当たります。「買収後の組織・人材統合」「イノベーションの強化」「組織・人材のグローバル化への対応」「管理的な意味でのガバナンスの強化」などです。昨今の事業環境を考えれば組織面の課題は膨大にありますが、ベインの調査では自社の業績拡大の加速要因が組織や人材の優位性によるものであると認識している経営者は、約2割にすぎませんでした。一方、約3割は組織が足かせになっていると思っています。そのせいでしょうか、世界の最高経営責任者(CEO)の約半数が就任後2年以内に組織再編に着手しています。しかし、再編で業績改善があったのは調査対象企業の3分の1以下で、逆に企業価値を毀損してしまったケースもありました。

これは、企業の業績の決定要因が、つまるところその組織の優劣にあるという思い込みから生じているのではないでしょうか。しかし、環境がどのように変化しても、またどの時代においても、戦略が重要であることに変わりはありません。さらに重要なのは、いかにその戦略と組織をつなぐか、どのように橋渡しをしていくかにあります。


(2)戦略と組織の橋渡し

前回は戦略OR組織の一元論ではなく、戦略、組織、そしてそれらの橋渡しの3点が重要だということを再確認しました。戦略の中身や質に関して具体的に言えば、戦略に「大きな成果を得るための前提として価値創造の源泉が明確に示されている」「自社の本当の強みがどのように利益創出につながるかが具体的に示されている」ことが重要なのです。

ところが残念なことに戦略にこれらが明確に示されていないケースをよく見かけます。さらにそうした結果、「戦略が実行にあたっての組織要件にまで踏み込んでいない」「踏み込んでいたとしても組織構造とレポーティングライン(命令系統)までしか規定していない」といったことが起こります。そのために組織が旧態依然であったり、戦略と乖離(かいり)して事業部単位、機能単位、地域単位でバラバラに再編されたりしています。このような状況を認識せず、やみくもに組織論に走るのはかなりリスクが高いと言えるでしょう。

そこで、ここで一度、基本に立ち返ってみましょう。企業が高い業績をあげるための基本は次の3点です。

(1)顧客にとって意味のある差別化が提供でき、そのための施策の実行可能性、反復可能性、発展可能性が担保された戦略。

(2)戦略の価値の源泉の創出・実現にフォーカスして設計されたシンプルで高効率な組織。

(3)自社のゴールと戦略を心底理解し、実行と成果の実現に燃えるハートとエネルギーを注ぎ込む社員。

「組織は戦略に従うのか、戦略は組織に従うのか」とは昔からよく言われていますが、実際には戦略があり、それに必要な組織と人材があり、それらが有機的かつ明示的にリンクしているというのがあるべき姿です。言い換えれば、インプットとしての戦略があり、その戦略を受けて細かな組織設計があるのです。この2つをブリッジのようにつなぐもの、戦略と組織を有機的にリンクさせるものが必要なのです。それがこれからご紹介する「オペレーティングモデル」です。


(3)すり合わせ重視の弊害

具体的にオペレーティングモデルの話に入る前に、戦略と組織をつなぐ上での基本となる視点について触れます。ベインではそれは、意思決定のあり方にあると考えています。

意思決定について日本企業が抱える課題の代表例とも言えるのが、すり合わせに多大な時間をかけることです。日本企業では、どのような戦略・施策を打つのかといった意思決定を行うための議論よりも、そこに参加する幹部の問題意識のすり合わせや、マイナスの影響を受けるであろう幹部への配慮のために多くの時間を費やす傾向があります。

このような意思決定のあり方は、一見非効率のように思えますが、同質な人や集団が参画し、右肩上がりの市場が前提とされていた時代においては意味があるものでした。意思決定そのものに時間がかかったとしても、その過程で実施に関与する当事者同士の意識が共有化されていくために、決まった後は組織が一体となって実行していくからです。そして最終的には優れた成果を生み出し、成長する。これが日本企業の強みでした。

しかし、市場が複雑化・不確実化し、競合も競争のルールも目まぐるしく変化する環境において、こうした日本企業特有の意思決定のあり方はスピードという点において致命的です。

今日必要とされている意思決定のあり方とは、将来の成功に向けて必要な意思決定項目を絞り込み、過去の経験ではなく、将来の兆候となる情報を収集して、適切な人材が適切な意思決定を行える体制づくりです。市場や競争ルールの変化が激しく、情報が限られた中でも鍵となる情報を効果的に収集し、最も確からしい意思決定を行うこと、そしてそれを継続的に行う仕組みを構築することが、これからの日本企業にとって極めて重要になってくるのではないでしょうか。

次回は、企業の業績と意思決定の関連について、ベインが行ったグローバルの調査結果を紹介し、日本企業の課題を探ります。


(4)有効性、日本企業見劣り

前回は日本企業の意思決定の課題について述べました。今回はベインが実施した意思決定の有効性とその実行に関する調査結果を基に、日本企業が抱える問題をさらに探っていきたいと思います。

この調査は売上高1000億円以上のグローバル企業760社を対象に実施したのですが、最も効果的な意思決定を行っている企業群は他社に比べて平均6ポイントも高い株主資本利益率を達成していました。

評価項目は、意思決定の内容が結果的に適切であったかを示す「質」、意思決定が競合より迅速であったかを示す「スピード」、どの程度効果的に意思決定が行動につながったかを示す「歩留まり」、意思決定のために費やした時間や費用、発生したトラブルを示す「労力」の4つです。これら4項目から各社の意思決定有効性を表す総合的なスコア(DM = Decision Multiplier)を計算しました。スコアと各企業の業績を分析した結果、意思決定の有効性と財務成果は、国別、業界別、企業規模別のいずれにおいても95%以上の統計的信頼度で相関したのです。

意思決定の有効性は、上位20%の企業が平均71点(100点満点)であるのに対し、それ以下の企業の平均は30点以下で、多くの企業に改善余地があることもわかりました。ベインではこの調査から「組織の設計上重視されるべきは意思決定の有効性である」というシンプルな結論に至りました。これが我々が戦略と組織をつなぐ上で「意思決定」に注目している理由です。

ところで、気になる日本企業の意思決定の有効性ですが、残念ながら日本企業はグローバルにおいて大きく見劣りする結果となってしまいました。4つの評価項目のうち「労力」だけは肩を並べているものの、他の3項目はいずれも平均以下だったのです。日本企業の課題はよく挙げられる「スピード」だけではありませんでした。戦略の質がよくない、リスク対応型・先例重視型組織の限界、トップが独断と偏見で決定することの弊害、事なかれ主義の助長など、原因には日本企業特有の要素が絡んでいるのではないでしょうか。


(5)決断の経験足りず

前回は日本企業の意思決定の質に課題があることを指摘し、その原因について簡単に触れました。今回はなぜ意思決定の質がよくないのか、その原因についてさらに深掘りします。

コンサルタントという仕事を通じて日本企業の経営トップの方々とお話しする機会は多いのですが、意思決定が重要であると認識されている方が少ないように感じられます。多くの方が自分のミッションは管理的な意味でのガバナンスだと思っておられるようで、大きな方向性を示す、最後は自分が決定するという自覚が必ずしも明確でないように思えることもあります。

この傾向は経営トップだけではありません。取締役や事業部長などの経営幹部も、いちかばちかの決断といったタフな意思決定の経験者、訓練を受けた人がグローバルに比べて極めて少ないといえます。これは昇格の要件に意思決定の経験量が考慮されていないことにも原因があると思われます。

また、意思決定の材料となる起案の質・量とも不足しています。起案の中身が曖昧だったり、全体を網羅していないなど、本当の意味で熟慮されているという起案はあまり多くありません。

このように、日本企業の多くは意思決定の質をさほど重視していませんが、それは誤りです。前回紹介した意思決定の有効性調査で明らかになったように、戦略を実行して結果を出すために最も重要なのは意思決定の質です。戦略は戦略にしか過ぎません。結局のところ、実行するには意思決定が必要となります。「経営トップの仕事は意思決定である」ということを、再認識する必要があるのです。

市場が複雑化・不確実化し、扱うべき情報が多様化している事業環境において、質の高い戦略を立案し、選択することは容易なことではありません。しかし、それは競合も同じです。複雑だから、不確実だからと甘受することは避けるべきです。日本企業には競合をしのぐスピードで意思決定し、効率的にオペレーションをするよう改善する余地が十分にあります。


(6)戦略共有と責任の明確化

前回は日本企業が結果を出すためには意思決定の質を高めることが重要であると書きました。今回と次回の2回にわたって、意思決定の質を高める8つの鍵について説明します。

1つ目の鍵は自社の戦略が何であるのか、その戦略を達成するために重要な意思決定が何であるかを、組織全体で明確に共有化することです。日本のある大手食品会社は在庫コントロールを全社的に重要な戦略的意思決定項目としたことで、業績を大きく改善しました。これは在庫コントロールという戦略目標を達成するために、さまざまな業務改善や工夫がなされたからです。

2つ目は意思決定についての役割と責任を明確にすることです。日本企業の多くは事業領域や機能領域で権限が決められ、階層が構築されています。そのため、機能横断的な判断や全社最適な判断が求められる場合に対応できないことが多々あります。前述した大手食品会社では、全社的視点から在庫をコントロールするために、事業部担当とは別の役員が部門横断的な役割を担うことで、継続的な仕組みを構築しました。

3つ目は意思決定を促進する組織構造づくりです。日本企業は新たな戦略や施策が打ち出されると、そのための組織をすぐにつくろうとしますが、必ずしも新たな組織は必要ではありません。ある大手日本企業では全社的な収益管理を徹底するために1人の幹部が特命担当となり、実務は各事業部が行うというアプローチをとりました。この組織改革では、懸念された新設組織と既存組織のあつれきや権力争いなどもなく、共通目的に対して一体となって取り組んだそうです。

4つ目は自社が抱える課題や戦略、意思決定に対して適切な人材を登用・配置することです。ある自動車メーカーはアフターサービス収益を最大化するという戦略目標を達成するためにアフターサービス志向の強い人材を総合販社のトップにしました。このケースはこれからの戦略、これからの業界構造に適したマインドセットを重視した人選の好例です。


(7)人材教育と判断基準、重要

前回、意思決定の質を高める8つの鍵のうち、4つ目として人材登用・配置について触れましたが、それには重要な基準があります。それは、意思決定を行う能力と経験です。従来の人事考課では業界経験や執行能力、過去の業績、人望などが重視されてきましたが、不確実性の高い環境においては意思決定の質が重要となります。意思決定の能力・経験による人材の登用・配置、そのための教育が5つ目の鍵です。

6つ目は意思決定の支援ツールの整備です。意思決定の質とスピードを高めるには、正しい情報が正しいタイミングと頻度で、正しいメンバーによってバイアスなく議論される必要があります。したがって、その仕組みを構築することは極めて重要なことです。グローバル展開するある外資の総合商社が差別化の難しいコモディティー・トレーディング事業において短期間で高成長を成し遂げたのは、絞り込まれた重要業績指標(KPI)の緻密かつ継続的なモニタリングを行ったことにあります。言い換えれば、モニタリングシステムを構築し、それを全社員の共通言語として浸透させたことが成功要因と言えるでしょう。

正しい情報が正しいタイミングと頻度でインプットされても判断基準が曖昧では意思決定できません。意思決定には明確な判断基準が必要となるのです。これが7つ目の鍵です。多数決が実質的に機能せず大衆迎合的に物事が決まる可能性の高い日本企業で、ノーと言える基準を明確にしておくことは極めて重要です。

最後は質の高い起案の生成を担保する仕組みづくりです。日本企業の経営トップとの議論では、起案の質や量について問題が指摘されることが少なくありません。リスクを取らない、トップの考え方や判断基準、自社の戦略に合わないなどです。こうしたトップの声に対して現場からも、上司がリスクを取らない、トップの意思決定が遅い、通常業務以外に起案をしても評価につながらないなどの反論が聞かれます。これらを解決するには、マネジャー層への教育を行うとともに、起案を後押しする仕組みや支援が必要です。


(8)組織設計の青写真

前回までは意思決定の質がいかに重要かについて書いてきました。今回からは、その意思決定を実行し、成功に導くためには何が必要なのかについて説明していきます。戦略を立て、意思決定を行えば、あとは実行あるのみです。その際どのような組織が必要で、どのようにつくればいいのかが常に課題となりますが、必要なのは戦略に適した組織であり、戦略と組織を有機的につなぐ橋渡しです。その橋渡しとなるのが、これからご紹介するオペレーティングモデルです。

オペレーティングモデルは会社の戦略や事業の価値源泉を実現する、有機的に整合した組織設計の青写真です。どのような視点で戦略と組織を連携させるのかを明確にし、戦略に基づいて利益を創出するための組織の基本設計なのです。

ベインが以前調査した企業は、特徴的な戦略とその戦略に合致したオペレーティングモデルを併せ持っていました。あるグローバルな消費財メーカーA社の戦略は、本社主導で徹底的にコストを管理しつつ、ローカル市場シェアを最大化するというものです。現地子会社に大幅な事業執行の権限と収益責任を持たせる一方、本社に有能な人材を集中させ、知見を蓄積するというオペレーティングモデルを採っています。逆に、トップダウンでブランドを管理することでプレミアム市場でのシェア拡大を追求する戦略を採る消費財メーカーB社もあります。本社でブランド管理を行い、ブランディングによる利益創出方法の勝ちパターンを見極める一方、現地子会社は勝ちパターンに基づいて地域に根付いた営業を徹底するというのがオペレーティングモデルとなります。一方的なトップダウンにならないよう、本社最高経営責任者(CEO)と子会社経営陣が一堂に会するフォーラムを定期的に開催することにより、ローカル市場の知見や洞察などを適切に本社と共有化するための工夫を行っています。

このようにオペレーティングモデルは、それぞれの企業の利益創出のための戦略をわかりやすく反映することが重要なのです。 


(9)4つの要素で策定

オペレーティングモデルの大きな特徴は、戦略に合わせてカスタムメイドしていく点にあります。一口に企業といっても、事業の複雑性、商品カテゴリーの特徴、組織文化など千差万別です。本社がトップダウンで運営している企業があれば、現地法人に強い権限を与えている企業もあります。グローバルブランドで勝負しようというメーカーもあれば、多くのローカルブランドを抱えるメーカーもありますし、顧客からのフィードバックやそれらに対する洞察がイノベーションを促進する企業もあれば、独自の技術力で勝負しようという企業もあります。

このようにそれぞれの企業の戦略、事業の複雑性、商品カテゴリーの特徴、組織文化などがまったく異なるため、各企業のオペレーティングモデルが違ってくるのは当然と言えるでしょう。ベインではオペレーティングモデルを大きく4つの要素、「組織の骨格」「責任・役割分担」「ガバナンス」「会社のDNA」に分けて考えています。

1つ目の「組織の骨格」とは建築でいう躯体(くたい)構造、基本設計のことで、組織のおおまかな形を意味します。2つ目の「責任・役割分担」はどの部署がどういう責任・役割分担しているかを決定することです。3つ目の「ガバナンス」は誰が、どのような経営情報を見て意思決定していくかを決めることです。最後の「会社のDNA」とは簡単にいえば「仕事の仕方」のことです。戦略を実行していくうえでの組織としての文化や価値観、行動原則などを決めることを指します。

この4つの要素がセットとなり、戦略と一体感をもって策定され、それによって組織の詳細設計が決まれば、戦略に基づく意思決定や施策の実行が確実になされるというわけです。このように、最初に組織の青写真を描いてから詳細な組織設計を始めるというのが、オペレーティングモデルの本質なのです。次回からは、オペレーティングモデルの4つの要素について具体的に説明します。


(10)収益源泉を基準に

今回と次回はオペレーティングモデルの「組織の骨格」について説明していきます。

組織の骨格とは基本設計のことです。ある会社に3つの主要製品群と3つの主要な活動地域があるとします。組織の大まかな構造として製品別、地域別、マトリックスと3パターンがありますが、会社の戦略で意図している利益創出のあり方から、どれが最も適しているのかを評価して決定するということです。重要なのは組織構造のくくり方です。基準となるのは収益の源泉です。決して組織図ではありませんので、この点には注意が必要です。

Xという特定用途向けの原動機市場でトップシェアを持つA社があるとします。A社にはY、Zというその他の特定用途向けの製品もあり、そこでのシェアは低かったとします。X、Y、Zはそれぞれ特定用途ではあるものの、顧客層には一定の重複があり、かつ製造の観点からも部材や製造工程に一定の重複があった場合には、収益単位としては3つを統合し、Xでのトップシェアという優位性を生かしつつ、Y、Zでのシェア拡大を狙うというのが合理的な選択である可能性が高くなります。「市場の定義」、すなわち顧客の重複度合い、製造プロセスの重複度合いを勘案することが重要となります。

また、グローバル展開するある食品メーカーの戦略は、各国市場の顧客の嗜好に合わせて商品を開発、個別にローカルの市場シェアを拡大するというもので、各国子会社に研究開発や営業、製造など幅広い権限と収益責任を与えています。各国のローカル市場をそれぞれ個別の事業と定義しているわけです。一方、同社には、ある新製品をグローバルベースで一気に立ち上げるという戦略もあり、その実行にあたっては各国子会社の事業から切り分けて本社直轄の部隊を作っています。新製品に関しては製造、マーケティング、営業において必要とされる能力やコストの重複度合いが高いと判断して、一つのグローバル事業として定義したための判断ということになります。


(11)本社の役割

「組織の骨格」の検討においては、「本社の役割」が重要となります。ベインでは事業への関与の度合いによって本社の役割を「能動的株主型」「戦略構築型」「戦略実行支援型」「コントロール型」の4つのタイプに分類しています。

本社の関与度合いが最も低い「能動的株主型」は財務目標や予算だけを設定し、執行は事業部門に任せるというスタイルです。意思決定は事業部門に任せ、マネジメントの業績のモニタリングのみを行います。「戦略構築型」は会社全体や主要事業ごとの基本的な戦略は本社が構築し、肉付けや実行は事業部門に任せるスタイルです。事業会社トップのパートナーとしてアドバイスし、主要施策に関するKPI(重要業績指標)の設定などもサポートします。

「戦略実行支援型」は本社がさらに実行にあたって積極的に関与し、必要な支援を提供します。事業戦略策定や予算策定のプロセス、人材育成や評価への関与度合いも密になってきます。最後に「コントロール型」は戦略立案から意思決定、事業計画策定、予実管理、施策推進の管理までを本社が主導して進めます。オペレーションや人事に関する最重要課題についての意思決定にも本社が深く関与します。

本社の役割について経営トップの方々と話をすると、本社がどこまで関与するかが明確でない、あるいは関与に一貫性がないと感じることがあります。問題が起きると途端に細かい日常業務やコストの管理方法などに干渉するにもかかわらず、事業の根幹となる戦略や重要な施策の中身については事業部門や子会社に丸投げしているケースは多いでのではないでしょうか。あるいは、事業の特質からして本来は「能動的株主型」が適しているにもかかわらず、「コントロール型」を課しているケースなども散見されます。

本社の役割で重要なのは戦略に照らし合わせ、どのタイプの関与度が最も適しているかを合理的に判断し、明示することによって一貫性をもった本社と事業部門間の役割分担を規定することにあると言えます。


(12)意思決定プロセス設計

オペレーティングモデルの2つめの要素である「責任・役割分担」は一般的な「誰が何をやるか」という視点ではなく、意思決定のあり方に焦点をあてることが大切です。戦略の実行に際して、鍵となる意思決定のプロセスを設計するのです。現場、最前線を担う部隊との共創(co-creation)が極めて重要であることに留意が必要です。多くの事例を見ていると、本社が一方的に作成したプロセスは十分に機能しない場合が多く、経営陣と現場が議論をすることで初めて血が通ったプロセスになるように思えます。

ベインが意思決定プロセスを設計する際によく勧めるのは、戦略を実行して大きな結果を出すために最も重要な意思決定項目(例えば10項目程度)をリストアップし、それぞれの項目に対する意思決定上の役割を誰が担うのかを規定するというものです。

具体的には、誰が起案に関する情報を提供し、誰が起案し、誰が意思決定し、誰が実行するかという役割と権限を明確にする必要があります。有効なのが「起案する(Recommend)」「起案に必要な情報を提供する(Input)」「起案内容に対して規制などに基づき合意する(Agree)」「起案に対する意思決定をする(Decide)」「意思決定後、実行する(Perform)」という5つの役割・権限を構造化するRAPIDというツールです。

整理をするために現状のたな卸しを行った結果、重要な意思決定項目に必ずしも十分な関心がなかったり、同一の項目に対して意思決定の権利があると認識している役員が複数いたりといった事が明らかになった例は多く存在します。もちろん、RAPIDの導入や意思決定プロセスのあるべき姿をまとめただけでは実行につながりません。意思決定した戦略を確実に実行していくには、施策の進捗を管理するKPI(重要業績指標)や「経営ダッシュボード」などを活用して、経営トップや現場の従業員をはじめ全社員に日々、素早く重要な意思決定をして実行するという思考様式を埋め込むことが必須となります。


(13)経営陣と現場の溝埋める

マネジメント層の多くは、売り上げや前年対比の業績だけを見がちですが、時として主観的・定性的な説明が多く、それでは課題の原因が明確に把握できなくなってしまいます。課題の原因の把握に加えて、課題の予兆を見逃さずに適切な予防策を打つことが必要となります。一方、ラインのリーダーや現場の担当者は、ノルマの達成や顧客の課題対応など、日々の業務に追われ、自社の戦略やゴールと自己の業務とに一体感を持つことは難しいのではないでしょうか。創意工夫による課題解決や部署横断的な連携が不足し、評価や職場環境に対する不満が生じるといったケースも多いと思います。

このように、経営陣と現場との間に生じがちなギャップを埋めるのが、オペレーティングモデルの3つめの要素である「ガバナンス」です。「管理のための管理」という意味ではなく、戦略に関わる意思決定や実行を迅速に行うための能動的な意味合いです。そのために有効なのがKPI(重要業績指標)と経営ダッシュボードです。マネジメント層は現場での日々の活動の進捗と、その活動が業績に与えているインパクトを把握できます。現場は自らの活動が業績にどう貢献しているのかを体感することが可能となります。

ベインではKPIを「活動評価指標KAI(Key Action Indicator)」「結果評価指標KRI(Key Results Indicator)」「財務業績指標KFI(Key Financial Indicator)」の3階層に分けて考えています。バランススコアカード的に活動指標を設定し、活動することで結果を出し、最終的には売り上げや利益につながるというイメージで、個人個人がそれぞれその先を読めるようになるのです。

経営陣の仕事は数字の後追いではなく、良いものであれ、悪いものであれ、業績変化の予兆を察知し、競合をしのぐスピードと徹底度合いで打ち手を実行することにあります。それを担保するのがオペレーティングモデルで意味する「ガバナンス」です。


(14)文化や価値観影響大きく

今回はオペレーティングモデルの最後の要素「会社のDNA」について説明していきます。

会社が戦略を実行して大きな結果を出していく上で、自社の組織の文化、価値観、社員の行動パターンが大きな影響を及ぼすことは言うまでもありません。こうした認識は十分にありながら、これまでの組織設計では構造やプロセスなどの「ハードウェア」に焦点をあて、「ソフトウェア」については戦略策定や組織設計と切り離された形で語られることが多かったのではないでしょうか。オペレーティングモデルの4つ目の要素として「会社のDNA」を挙げている理由は、そうした問題意識に基づいています。

あるグローバルな消費財メーカーは、現場の行動が戦略の実行・結果につながるような行動原則を構築し、本社経営陣が相当な時間とエネルギーをかけて社内に浸透させ、業績を大幅に改善させました。導入準備の鍵は「変わらなければいけない理由」と「向かうべき方向」を、事実やデータに基づいて徹底的に分析し、明示化したことです。強化すべき領域、競合と圧倒的な差別化を図るべき組織能力などを、誰にでもわかる言葉で示しました。中味の作成については、ビジョンから戦略、戦略から施策、施策から日々の行動、日々の行動から期待される結果というように、一貫性を持たせながら、求められる行動と慎むべき行動を極力具体的に記述したことがポイントでした。組織に浸透できた要因は、プロジェクトを経営陣が最優先事項とし、自ら袖まくりモードで作成に携わっただけでなく、初期段階で幅広いレベルのリーダーを推進役に抜擢し、巻き込んだことにありました。

同社の最後の秘訣は、この行動原則を「譲れぬ一線」と位置付け、遵守を厳格にモニターし、一方で定期的な見直しによって修正・進化させたことです。行動原則に基づいた人事評価によって推進役を毎年再選抜することで行動原則を維持するほか、現場の社員を巻き込んだワークショップを毎年実施して戦略の変化に合わせて行動原則を見直しているわけです。


(15)3つの補助的要素

ここまで「組織の骨格」「責任・役割分担」「ガバナンス」「会社のDNA」を説明しましたが、オペレーティングモデルにはこれらを前提にさらに3つの補助的な要素があります。「鍵となる人材」「鍵となるオペレーション」「鍵となるテクノロジー」です。

オペレーティングモデルは戦略と詳細な組織設計をつなぐブリッジです。戦略の実行上、肝となるポジションとそこに求められる人材像、さらにそうした人材の獲得方法を、明確にしておく必要があるわけです。

人材像を定める上で重要な1つ目の視点が、当該ポジションにおける機能面でのスキルであることは言うまでもありません。例えば新興国市場における生産財のマーケティングのスキル、成熟国におけるシニア世代向け新サービスの開発スキルなど、戦略で意図されている価値創造の源泉、他社との差別化要素における具体的な業務スキルのことです。

2つ目は意思決定に関わる経験とスキル、3つ目が「マインドセット」です。マインドセットとは「会社のDNA」でいう譲れない原則や行動原則に合致しているということです。どれほど優れたスキルや意思決定の経験があったとしても、マインドセットが伴わなければ戦略実行上の大きなリスクとなります。

鍵となる人材の獲得方法の基本的なアプローチは、人材の需要と供給のプランをつくることです。日本の企業の多くは人材育成の重要性を認識していますが、育成計画が「需要サイド」と綿密にリンクしているケースはそれほど多くないのが実情です。例えば南米のある特定の製品市場で圧倒的なシェアを取ることが戦略上の意図だとした場合、必要な人材像、人数、獲得のタイミングを明確にすることが需要サイド、社内から何人をいつまでに育成・登用するか、不足する人材を外部からどのようなチャネルでいつまでに採用するかが供給サイドで、両面をリンクした計画を作ることが重要です。ベインは鍵となる人材の需要と供給のプランを「タレントダッシュボード」と呼ぶツールによって恒常的に管理・推進することを勧めています。


(16)テクノロジーの重要性

オペレーティングモデルの補助的な要素の2つ目の「鍵となるオペレーション」とは、網羅的で詳細なオペレーションプロセスの設定ではありません。戦略を実行する上で「鍵となる」オペレーションプロセスを特定し、しっかり規定することを意味します。

例えば戦略上、競合と圧倒的な差別化を図るべき対象の一つが、商品やサービスの購入プロセスにおいて素晴らしい顧客体験を提供することにあるとします。まずはそうした顧客体験につながる重要な接点として、商品やサービスの内容説明、コールセンターの対応などの個別機能でのオペレーション、関連する機能間の連携を明確に定めておき、後々の詳細設計の際にそれらがあいまいになったり、何らかの妥協が起きたりすることを防ぐ必要があるわけです。

3つ目の補助的な要素である「鍵となるテクノロジー」についても、オペレーティングモデルを設計する段階で特定しておく必要があります。この時代、テクノロジーが価値創造や差別化において果たす役割がこれまでとは格段に違うレベルで重要となっていることは言うまでもありません。どのテクノロジーが戦略上で意図している差別化を支えているのかを具体的に特定し、それらの獲得方法、自社で開発するのか外部から獲得するのかを計画しておくことが重要なのです。

前回と今回にわたって説明した3つの要素、鍵となる人材、鍵となるオペレーション、鍵となるテクノロジーは、補助的な要素という表現をしましたが、決して「おまけ的」なものではありません。むしろそれらが正しく特定されない限りは、組織の骨格、責任・役割分担、ガバナンス、会社のDNAという4つの要素をいかに的確に定めても戦略が結果につながらないという意味において、オペレーティングモデルの設計上、大切な要素なのです。

オペレーティングモデルは概略や総論的なものではなく、後に起こりうる誤解や妥協の余地を最小化するために、肝となる要素については最初から詳細に決めておくというメリハリが重要となります。


(17)経営トップの仕事

これまで説明してきたオペレーティングモデルの要諦は、次の3つに集約できます。

・オペレーティングモデルとは自社の戦略が意図している価値創造のインパクトの実現に必要な意思決定とその実行を、競合をしのぐレベルで遂行できる組織の詳細設計を可能にするためのブリッジである。

・オペレーティングモデルは4つの要素(組織の骨格、責任・役割分担、ガバナンス、会社のDNA)と3つの補助的な要素(鍵となる人材、鍵となるオペレーション、鍵となるテクノロジー)で構成されている。

・これらの各要素は個別に考えるのではなく、戦略が意図している価値創出の源泉にもとづき、相互が有機的にリンクしているものでなければならない。

ところで、ここまでの説明から、オペレーティングモデルは必然的に自社にとって相当なレベルでカスタマイズが必要となるということにお気付きのことと思います。会社の置かれている事業環境や競合の動き、その中での自社の戦略は企業ごとに異なるわけですから、カスタマイズは当然必要となります。また、自社内でオペレーティングモデルを検討する際にも、上記の各要素について、必ずしも唯一無二の「答え」が出るとは限らないということに留意が必要です。

例えばオペレーティングモデルの一つの要素である「本社の役割」を決める時、案1、案2というように複数のオプションが出てきます。最終結論は、いくつものオプションのメリットやデメリットを比較した結果、抽出されたものなのです。では、誰がどうやって最終的に決断したのでしょうか? 最終的には経営判断です。オペレーティングモデルの結論とその判断根拠を示すのは、経営トップの仕事というわけです。

オペレーティングモデルの複数案のどれを採用するのかという意思決定、そしてその判断根拠の明示化を経営トップが直接的にリードすることは極めて重要です。「以心伝心」では、多様化する人材による緊密なチームプレーがますます重要となる昨今の事業環境で、十分に対応できません。


(18)妥当性、恒常的に確認

ベインの全世界のパートナーを対象に、オペレーティングモデルの在り方についての調査を行ったことがあります。その結果、企業のオペレーティングモデルが戦略と組織を適切につなぐものとして設計されているケースは必ずしも多くないことがわかりました。理由として、経営トップがオペレーティングモデルの見直しや再設計が重要な経営課題であると認識していないのではないかという問題意識が多くありました。

今回は、どのような時にオペレーティングモデルを見直し、再設計を行うべきなのかというポイントを考えてみたいと思います。まず明らかなのは、例えばグローバル化に伴う大規模なM&A(合併・買収)など、明らかに戦略や組織の見直しが必要な「特別なイベント」が発生する場合です。

しかし、事業環境がこれだけ速く変化している昨今、そうした特別な場合にだけ見直しや再設計を行えばいいというものではありません。つまり、恒常的にオペレーティングモデルの妥当性を確認しておいたほうがよいということです。

年次計画や中期計画など、主として業績や戦略面の経営サイクルはどの企業も採用していますが、組織の見直しや再設計となると、そうした経営サイクルとは連動していないというような企業の例もあります。業績の推移や戦略の有効性などについて、企業活動における重要な経営指標として恒常的にモニタリングしているのと同様に、自社の組織のあり方、すなわち、戦略で意図している結果を本当に出せる組織になっているかについても、オペレーティングモデルの妥当性という視点で恒常的なモニタリングが重要です。

では、オペレーティングモデルの妥当性のチェックは、どのようにやるべきでしょうか。ベインでは、現時点あるいはこれから策定しようとしている経営計画やその根幹となっている戦略に対するオペレーティングモデルの「適合度合い」を評価する診断ツールの導入を勧めています。次回はこの診断ツールの内容をご説明します。


(19)適合度合いを評価

今回はオペレーティングモデルの適合度合いを確認し評価するための診断ツールを紹介します。5つの極めてシンプルな質問から構成されています。具体的には、(1)経営計画や戦略で意図されている最も重要な業績向上の施策が迅速かつ着実に実行できるように設計されているか? (2)複数事業間のシナジー実現を担保できているか? (3)戦略の実行上の鍵となる意思決定が迅速に実行できるように設計されているか? (4)組織全体のコスト効率を一定枠内に抑えることができているか? (5)戦略の実行に不可欠な自社の価値観や文化を継続的に強化できているか? から評価します。

成果物のイメージとしては、これらの質問を縦軸にとり、横軸にオペレーティングモデルの4つの要素(組織の骨格、責任・役割分担、ガバナンス、自社のDNA)と3つの補助的な要素(鍵となる人材、鍵となるオペレーション、鍵となるテクノロジー)を並べ、マス目のどこに課題があるのかを明らかにし、それらに対する改善の方向性を立案するというものです。

評価にあたっては、本社の一握りのグループがやるべきものでもありませんし、唯一の正解があるわけでもありません。開発、設計、製造、営業などの現場の最前線で起きていることを的確にすくい上げて評価することも重要ですし、自社の課題の評価や打ち手を考えるためのヒントとして競合のオペレーティングモデルをベンチマークすることも有用となります。

診断に際してベインでは、経営トップのみならず、現場からのインプットを反映させるためにも、1~2日のワークショップ形式を提案しています。こうした診断を定期的な経営サイクルに組み込むことで、「特別なイベント」の発生に伴うオペレーティングモデルの再設計の際にも、あわてることなく効率的、効果的に取り組むことができるのです。さらに重要なのは、戦略と組織が合致しているかという、抽象的であるが故にマインドシェアがおろそかになりがちな課題に対して、経営トップから最前線の社員までが日ごろから思いをはせるようになるという効果にあります。


(20)モデル設計、5つの行程

今回からオペレーティングモデルの設計のやり方に入ります。まずは全体のプロセスから入り、次にステップごとに詳しく説明したいと思います。

オペレーティングモデルの設計は、ステップ1「戦略要件の抽出」、ステップ2「組織の現状の評価」、ステップ3「設計原則の立案」、ステップ4「オプション出しと評価」、そしてこれらのステップと同時並行で行う「チェンジマネジメント(変革プロセスのマネジメント)」の5つに分かれています。

1つ目の「戦略要件の抽出」は、戦略を実行し、結果を出すために必要な組織要件のエッセンスを明確にすることです。2つ目の「組織の現状の評価」は、組織の強みと弱み、意思決定の有効性の評価、個別部署のケイパビリティーの高低などを包括的に評価します。ステップ1とステップ2は同時に行います。

3つ目の「設計原則の立案」では、オペレーティングモデルを設計するにあたっての基本原則をつくります。以前説明したようにオペレーティングモデルでは画一的に答えが出ることは少なく、ほとんどの場合、複数の代替案が導出されることになります。代替案の評価と最終的な選択判断をする上でのよりどころを、このステップでつくります。そして4つ目の「オプション出しと評価」で、実際にオペレーティングモデルを構成する4つの要素と3つの補助的な要素を具体的に検討し、「答え」を導出することになります。

オペレーティングモデルの設計のプロセスでは、上記の作業と並行して「チェンジマネジメント」を適切に行うことが重要です。戦略が変わり、それに呼応して組織の構造やオペレーションが変わることは、往々にして社内にかなりのストレスをもたらすことになりますし、その結果、現業に支障をきたしたり、競合に塩を送るようなことになったりしては本末転倒です。このような観点から、変革とそれに伴うストレスを適切にマネジメントすることが重要となるわけです。

これらの行程は、変革の規模にもよりますが、だいたい3~6か月で一気呵成(かせい)に進めます。


(21)重要項目に絞り要件抽出

オペレーティングモデル設計のステップ1「戦略要件の抽出」では、戦略実行にあたって必須となる要件を抽出します。抽出項目はできるだけ絞りこむことが重要であり、ベインでは次の3つの観点から要件を検討することを勧めています。
○差別化すべきケイパビリティー(=自社が持つ組織能力や資産)
○鍵となる意思決定項目
○コスト効率の許容値

競争優位の確立には競合との圧倒的な差別化が必要ですが、「差別化すべきケイパビリティー」は次の3つの観点から検討すると絞り込みやすくなります。

(1)経営管理系の能力:事業ポートフォリオの管理、M&A、提携、人事管理など。(2)オペレーション系の能力:サプライチェーンの設計・運営、マーケティング、プロモーション、顧客リレーションの構築など。(3)自社特有の資産:工場・店舗ネットワークなど物理的な資産、技術・知的財産・ブランドなどの無形資産。以上の3点です。

「鍵となる意思決定項目」の検討で有効なのは「戦略で意図している業績を達成するうえで最も重要な意思決定項目を10項目挙げるとすれば、それらは何か?」との問いを自らに投げかけることです。各部署からの積み上げではきりがなくなるのが通常ですので、あえてトップダウンで10項目に絞るのがポイントです。

最後の「コスト効率の許容値」とは、組織全体のコスト総額、あるいは対売上高比率の上限値を意味します。戦略実行の要件に合わせて組織やオペレーションの再設計・修正しようとすると、すべてでベストを目指したくなります。しかし、それでは組織全体を維持・運用するコストが膨れ上がるばかりです。あらかじめ組織全体のコスト効率の許容しうる上限値を規定しておき、どこを強化し、どこは戦略的に手を抜くかといったメリハリを強制することが鍵となります。戦略要件の抽出で大事なのは、何でもかんでも羅列することではなく、最重要項目に絞ることにあります。


(22)組織評価は定期的に実施

前回、具体的なオペレーティングモデルを検討する前に戦略要件の抽出について書きましたが、包括的な組織診断を同時並行で実施することも必要となります。今回は、オペレーティングモデル設計のステップ2「組織の現状の評価」について説明します。

組織評価とは、「現時点での自社の強みと弱み」「意思決定の有効性の調査結果」「会社が持っている価値観」などのように、組織の現状の棚卸しを行い、その中での戦略要件にかかわらず、残しておくべき強みや克服すべき弱みを包括的に把握することです。

あるべき姿を追求していくと、どうしても現在の組織とのギャップが生じてきます。しかし、現在の組織にはこれまでの会社の歴史や方針をふまえた連続性があります。戦略要件の観点から必要であったとしても、それらを無視した再設計は無謀であり、また多くのリスクを伴います。戦略要件と自社の強み・弱みを掛け合わせて、維持・強化すべき強みと克服すべき弱みについての現実的な最適解を導出するには、組織の伝統的な強みを毀損せずに、戦略要件にできる限りフィットしたオペレーティングモデルを選択するという視点が必要となります。ステップ1と2を同時並行に実施することの意味はここにあります。

ベインは組織評価にあたり、以下の6項目から強み弱みを検討することを提案しています。
(1)トップマネジメントのリーダーシップ
(2)施策の優先順位や役割分担の明確さ
(3)組織構造のシンプルさ
(4)意思決定の質とスピード
(5)人材の適所適材の徹底度合い
(6)組織全体の情熱(「結果を出すこと」への執着心)

組織評価は定期的に行うことも重要です。定期的に評価することで定点観測が可能となりますし、また他社と比較することもできるからです。ベインは日本企業も含めグローバルで1000社以上の企業のデータベースを保有しています。外部のデータベースを通じて、他社との比較感を得ることも重要なことです。


(23)設計原則を決め、順守する

オペレーティングモデル設計のステップ3「設計原則の立案」はステップ1~2の最適解を明示化したものです。オペレーティングモデルの検討に先立ち設計原則を決める行為は、まどろっこしく感じるかもしれません。しかし、すんなりと1つの答えが導出されることはまれで、多くの場合、複数の代替案が出ます。

例えば4つの異なる主力製品を持つ企業の場合、4つの事業部を組織の骨格にするのが単純な答えかもしれません。しかし、製品AとB、CとDのそれぞれの顧客やチャネルの共有度が高い場合、2つにまとめる案も出てきます。よくある話ですが大抵は百家争鳴になり、戦略の要件や組織の強み・弱みの観点からは合理性が担保されていない結論になることもあります。

設計原則はそうした状況を解消し、各代替案の適合度合いを総合的に評価し、最終的な結論を出すためのものなのです。上記の例では、「2つの事業部」が一見最適解と思えたとしても、戦略の要件や組織の伝統的な強みから見ると、必ずしもそれがベストな選択肢ではないかもしれません。こうした状況下での判断のよりどころが設計原則です。この原則に絶えず照らし合わせた評価と判断によって、最終判断がオペレーティングモデルの特定の要素から見ると不適合であっても、それ以外の要素の工夫で不具合の解消を図ることが可能となります。各構成要素を独立したものととらえず、有機的に関連しあっているシステムの一部であるという見方に立った検討が可能となるわけです。

設計原則がカバーすべき内容は次の5つです。
(1)自社のビジョンやゴールに関する原則
(2)ターゲットとする顧客に関する原則
(3)競合と差別化すべきケイパビリティーに関する原則
(4)重要な意思決定に関する原則
(5)組織のDNAや価値観に関する原則

設計原則の検討と絞り込みには十分な時間とエネルギーをかけつつも、一旦決めた後は設計原則を自社にとっての譲れない一線として、後付けでの変更や妥協などは認めないことが重要です。


(24)骨格や役割分担を固める

ここまでのステップはオペレーティングモデル設計の準備段階です。ステップ4で4つの要素「組織の骨格」「責任・役割分担」「ガバナンス」「会社のDNA」を策定していきます。今回は改めてそれぞれの要素ごとに、答えを出すべき問いを整理します。

組織の骨格
(1)組織をいくつの収益単位(=収益の源泉に即した事業の定義)でくくるべきか?
(2)横串的なサポートが必要な機能は何か? 事業単位とのコーディネーションのやり方をどう規定するか?
(3)本社の役割は何か? その役割に適切な本社のサイズはどのくらいか?

責任・役割分担
(1)主要な事業、サポート機能間の責任・役割、特に異なるファンクション間でのやり取りにおける責任・役割をどう規定するか?
(2)戦略実行上の鍵となる意思決定項目は何か? それぞれの意思決定項目における、起案、起案者に対する情報提供、意思決定、実行の責任は誰が担うか?


ガバナンス
(1)経営会議体の構造、各会議体の責任・役割分担の割り付けをどうするか?
(2)戦略実行の進捗を計測する主要なKPI(重要業績指標)は何か? それらのKPIをどのようなやり方で意思決定に活用するか?

会社のDNA
(1)自社にふさわしい意思決定のスタイルは何か?(トップダウン型か合意形成プロセス重視型か。あるいは、それらを状況に応じて意識的に使い分けるか?)
(2)維持・強化すべき自社の価値観、カルチャーは?
(3)それらを具現する行動原則は何か?

さらに、補助的な要素(重要なポジションの特定と人材の需給プラン、鍵となるオペレーションプロセスの特定と設計、戦略の実行に不可欠なテクノロジー要素の特定と入手方法)に対する答えを出すことによって、ステップ4の作業が完了します。


(25)検討の際、留意すべき3点

ステップ3まで終われば、オペレーティングモデルの各要素に対するオプションを導出し、設計原則に照らし合わせて最適解を選択するのはそれほど難しいことではありません。そうは言ってもオペレーティングモデルの検討にあたって留意すべきポイントがあります。ここでは特に重要な3つのポイントを説明します。

(1)意思決定を過度に複雑にしない

オペレーティングモデルの意義は、意思決定を通して戦略と組織をつなぎ、高い業績を達成することですが、そのことを意識しすぎるのもよくありません。よくみられるのが、戦略の実行にあたっての重要な意思決定項目について、組織の各階層や各地域に重複して責任を課してしまうというものです。これでは意思決定の消化不良を起こしてしまいます。こうした滞留状態を徹底的に排除する視点を持つことが大切です。

(2)集約しすぎない
オペレーティングモデルの検討を始めると、各事業部・地域に分散されていた機能を集約したくなりますが、安易に実行すべきではありません。マーケティング機能で言えば、確かに集約することでベストプラクティスの共有や業務効率の向上など様々な利点がありますが、その一方で、各地域の顧客ニーズや購買行動に対する洞察力、それに基づいてローカライズしたマーケティング力がおろそかになるという側面も出てきます。優れたオペレーティングモデルを持つ企業は、メリットとデメリットを綿密かつ定量的に比較し、メリットが大きく上回らない限り集約しません。

(3)残り3割で勝負するという認識を持つ
オペレーティングモデルは、自社が置かれている事業環境、その中での戦略、自社のDNA、強み・弱みに即してカスタマイズされるべきものですが、必ずしも100%自社に固有のものになるというわけではありません。同じ事業環境であれば、おそらく競合のオペレーティングモデルの7割は自社と同様であってもおかしくはありません。大事なことは、残り3割で勝負が決まるという認識を持つことなのです。


(26)従業員を変革に巻き込む

企業が連続的に経済活動を行う存在である以上、これまでの歴史や経緯を無視して一足飛びに大きな変革を意図することはリスクとなります。しかし、新しい戦略の策定、オペレーティングモデルの見直し、組織再設計という一連のプロセスは、事業環境の変化が加速している昨今、従業員にとってそれなりの変革を意味することも事実です。したがって、オペレーティングモデルの検討プロセス(ステップ1~4)と同時並行で、従業員がこれら一連の変革に共鳴し、コミットしていくためのプログラムが必要となります。

こうした変革プロセスのマネジメントの骨子として、次の6点をカバーできるとよいでしょう。(1)と(2)は、左脳的なものだけでなく、右脳や感情に訴えかけるものにすることが大事です。
(1)なぜ、戦略と組織、そして意思決定のあり方を変革しなければいけないかを、シンプルに、かつ説得力をもったものとしてまとめる。

(2)その上で自社がどこに向かっていくかを明示する。
(3)変革のコアグループ(伝道師)を招集し、変革のプロセスに巻き込む。例えば「一連のオペレーティングモデル検討の主導」「アイデア出し」「社内の様々な交流の場を通じた周りの社員の議論への巻き込み」など。コアグループは現在の肩書などでなく、次世代リーダーを選抜し機会を与えるという視点から選ぶ。
(4)定期的に、変革に伴うリスクの所在を評価し、それらに対して能動的に手立てを講じる。
(5)社内・社外のステークホルダーに対するコミュニケーションを徹底する。
(6)(最も大事なこととして)既存の事業の勢いをそぐような要因を最小化する。

上記の要素をカバーして変革に伴うリスクを最小化することに加え、最も大事なのは自社に適合する変革スピードを定めることです。変革は1回限りでなく、継続していく課題です。最初の変革スピードを体感した後は、次回以降はそれ以上のスピードでより大きな変革を実行するとの目的意識を持つことが重要です。


(27)陥りがちな落とし穴

今回は、われわれのこれまでの経験から、企業がオペレーティングモデルを検討するうえで陥りがちないくつかの落とし穴についてお話しします。

よくみられるのが、経営トップのリーダーシップ不足です。オペレーティングモデルの4つの要素に対する複数の代替案の評価と判断根拠を示すことは、経営トップの仕事であり、「経営判断」であると以前述べました。トップが率先してこの問題に取り組み、直接的にリードしなくては、オペレーティングモデルの検討と実行を最後までやり通すことは難しいのです。

時間をかけすぎることにも陥りがちです。それによって、事業環境の変化にスピーディーに対応できなくなる可能性が高くなることは、言うまでもありません。オペレーティングモデルの検討においては、「完璧主義」とは決別することも必要となってきます。戦略を実行して、一刻もはやく大きな結果を出すうえで、組織やオペレーションの何が最も重要なのかを見極めるということが、発想の原点になっているからです。検討を進める中で、当面答えが出すことが難しい課題については、一旦棚上げをして、「次善の策」で実行に臨むという判断も重要となってきます。こうした割り切りは結果を出すうえでの「戦略的手抜き」であり、よくある「問題の先送り」とは異なります。

フロントライン(現場)の巻き込み不足というのも、落とし穴となります。もちろん経営トップがリーダーシップを発揮しなくてはいけないのですが、営業、研究開発、製造など、最前線の現場を担う従業員を巻き込み、現場の実情を理解して検討していかなければ、間違ったオペレーティングモデルができあがってしまうでしょう。仮に間違っていないとしても、できあがった自社のオペレーティングモデルに対して、現場の従業員からのコミットメントやオーナーシップを得ることは難しくなります。こうした共創(Co-creation)のプロセス自体に、フロントラインとマネジメント層によるチームビルディングという価値があることを認識する必要があります。


(28)逆戻りや失敗の原因

今回はもう少しソフトな側面から、オペレーティングモデルが失敗してしまう原因についてお話ししたいと思います。

(1)曖昧性の甘受、合理性・明示化への抵抗感
企業経営にとって合理性や明示化が基本であることに、異をとなえる方はいないと思います。しかし、合理性や明示化がすべてで、曖昧性や「以心伝心」的なものは完全に根絶すべきであるといった場合には、どこか抵抗感を感じる方も多いのではないでしょうか。実際には、こうした二極の話ではなく、合理性の徹底度合いのレベルが重要なわけですが、それを意識しないと失敗につながるケースが多いようです。

(2)過去の施策や試みの正当化、あるいは過度な否定
オペレーティングモデルを検討していくと、過去の施策や試みの否定につながることも多々あります。それに対して、正当化のための正当化や過度な否定、あるいは関与した人々に配慮したりすることによって、時間やエネルギーを浪費しては本末転倒です。

(3)自社の強み・資産への過度な自信、あるいは過度な否定
思い込みや配慮によって、競合に対して圧倒的な差別化を図るべきケイパビリティーについて無駄に論争するのは避けなければなりません。重要なのは、顧客の声、現場の声、競合のベンチマークなどの事実ベースによる是々非々の議論を徹底することです。

(4)漸次改善志向
挑むべき変革の規模が大きいほど、最初に大きなステップを踏むのではなく、漸次改善志向に陥りがちです。オペレーティングモデルの補助的な要素のひとつである「鍵となる人材」に関連して言えば、思い切った外部人材の採用や社内抜てきをせずに、中途半端な登用をした結果、意図していた変革が起きず、むしろ逆戻りしてしまうというケースもあります。リスクと対応案を十分に検討しておくことは当然として、あえて、後戻りできない第一歩を踏み出すことが、変革のモメンタムづくりの観点からは重要となります。


(29)ハードとソフト、並行改革

これまでに述べたことを簡潔にまとめれば「組織が卓越した業績を生み出すのは、適切に策定された戦略の実行に必要な意思決定が、競合他社より有効かつ迅速に下され、実行に移されることが最低条件」「オペレーティングモデルはそれを確実にするために戦略と組織をブリッジするツールである」ということです。

オペレーティングモデルの趣旨と目的に関して、連載中に示唆に富むコメントをいただきましたので、それをご紹介したいと思います。

腕時計をはじめ多様な電子コンポーネント・部品の製造販売を手掛けるセイコーインスツル(SII)で、社長として一連の改革をリードし、現在は同社の相談役を務める鎌田国雄氏からは、「SIIの復活を目指した新しい戦略の策定に伴って、権限と役割の見直し、本社の役割の強化、KPI・ダッシュボードの導入など、当連載で述べられていたオペレーティングモデルの構成要素の改善を同時並行で進めたことは極めて有効であった」との言葉をいただきました。

そして「こうしたハードウエアの中では、市場や顧客の重複を意識した事業のくくり方の見直しは特に重要であり、当社としても継続的に取り組んでいく必要がある。さらに言えば、ハードウエアの整備だけでは戦略が意図している成果は完全には実現できないと痛感している。熱いハートと冷徹な判断力を併せ持つ社員の一層の育成や確保、そうした社員が縦横無尽に活躍できるような社内の価値観をこれまで以上に強化することが、本当の勝負どころ。こうした改革を実現するうえで、当社を含めて多くの日本の企業にとっては人材の獲得や育成における自前主義からの脱皮を加速することが必要であろう」と指摘されていました。

オペレーティングモデルは、必ずしもハードだけでなく、「会社のDNA」や「鍵となる人材」などの要素によってソフトの部分もブリッジすることを意図してはいますが、人材というテーマについては並行して本格的に取り組む必要があるという重要な指摘であると考えています。


(30)目標に向かって突き進む

前回に続いて、連載中にいただきましたコメントをご紹介します。苦境から見事に脱し、現在は海外でも活躍の場を広げているフジタの取締役専務執行役員の土屋達朗氏からは「会社の建て直しでは、オペレーティングモデルの中でも特に本社の役割が重要であると思う。フジタの再建においても、本社サイドが首尾一貫して、戦略的な合理性を事業部門に対して問い続けたことが成功の鍵の一つであった」との指摘をいただきました。同社は再建時に「本社の役割」の分類の中から「戦略構築型」を選択されましたが、それは単純にトップダウンで戦略を事業部門に押し付けるということではなく、戦略的な合理性と事業の現実との間の「せめぎ合い」を積極的に仕掛けていくことが鍵であるとの考えによるものだったようです。

フジタは現在、2020年の東京オリンピック開催後をにらんだ更なる飛躍を目指して、事業領域やビジネスモデルの進化に取り組んでいます。そうしたステージにおいては、「戦略の進化に応じて、組織が自然に進化していくような仕組みを作りたいと考えている。オペレーティングモデルの明示化を経営トップを含めて社内で習慣化すれば可能になるのではないか」とのコメントもいただきました。オペレーティングモデルは戦略と組織を静的につなぐだけでなく、戦略の進化に応じて組織も進化するという動的なフレームワークであることに着目されています。

昨今の情報革命によって、コーポレーションという「器」が従来持っていた取引費用のセーブというメリットが失われる一方、複雑化のコストなど負の側面が顕著になってきているとの見方があります。マスコラボレーション的な手法の有効性を否定するものではありませんが、活性化された人材が一つの器に属して明確な目標に向かって突き進むことの価値は変わらないと思います。オペレーティングモデルという考え方によって、そうした本来コーポレーションが持っている価値をもっと生かせるのではないかと考えています。

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