Press release
2020年の高級品業界は新型コロナ危機の深刻な打撃を受け、個人向け高級品市場は2009年以降で初めて縮小し、現在の為替レートで23%減の2,170億ユーロまで落ち込みました。
この一年で、私たちがどう暮らし、どう買い物をし、何に価値を置くかといった価値観が根本的に大きく変化しました。旅行が困難になり自宅に留まるようになったことで、高級品を消費する手段、時期、目的も変化しました。コロナによる混乱は高級品業界に様々な変革を起こす契機ともなりました。高級品のオンライン購入が急増し、市場に占める割合は2019年の12%から2020年の23%に倍増しました。消費者は企業に社会的意義のある活動をよりいっそう求めるようになり、高級品ブランドは、多様性、インクルージョン、持続可能性における現実的で継続的なコミットメントを示すことを期待されるようになりました。
回復の兆し
ベイン・アンド・カンパニーでは、マクロ経済、コロナの今後、世界的な観光再開のタイミング、そして各国の顧客の回復力等を考慮し2021年の予測を立てています。現状では2021年の成長率は10~12%から17~19%増の範囲で変動すると予測しています。
企業は収入減少に伴い、特に利益が著しく減少しています。ベインの予測によると、営業利益は2019年の水準と比べて60%減(平均利幅が21%から12%)となる見込みです。ベインの試算によると、同市場は2021年に、2020年に失われた利益の50%を回復する見通しですが、それでも2019年の水準には届かないことが予測されます。その理由として、売上高の減少にもかかわらず、大半の原価(マーケティング、オンラインチャネル、店舗費用)に持続的な支出(場合によってはさらなる資金投入)を行う必要があることが挙げられます。ベインの予測では、今後3年で回復のペースが速くなり、2022年末から2023年初めに2019年の水準に戻ると推測しています。
中国をはじめとして、国内購入へのシフトが加速
中国本土は、市場規模が現在の為替レートで45%増の440億ユーロに達し、今年、前年比の成長を達成できる唯一の市場になると見込まれています。同地域では国内消費がチャネル、カテゴリー、世代、価格帯を問わず急拡大しました。
日本の2020年の市場規模は180億ユーロと、現在の為替レートで24%縮小しました。日本ではブランド間で業績の二極化が見られ、時代を問わず価値を認められ、長期的な投資対象と見なされるブランドが、より優れた回復力を示しています。
各市場の変化は、人々が旅行をせず自国で買い物をするようになったことを背景に、高級品の購入場所の変化が急速に進みました。今年は国内購入の割合が80~85%に達し、今後も、特に中国、そしてアジア地域全体で国内購入の需要が増えることが見込まれるため、国内購入比率は65~70%で推移する見込みです。
オンラインチャネルの成長が加速。実店舗の在り方の見直しへ
コロナがもたらした変化により、生活のあらゆる面でオンライン取引の重要性が高まりました。高級品市場では2020年にオンライン販売が490億ユーロに達し、2019年の330億ユーロから増加しました。オンライン購入が占める割合は、2019年の12%から2020年の23%へと倍増しました。
2025年にはオンラインが高級品購入の第一チャネルになる見込みで、オムニチャネルの改革が加速しています。
体験ベースの高級品市場の今後
2020年は、個人向け高級品市場のすべてのカテゴリーが縮小し、体験型の商品(ベイン・アンド・カンパニーの定義では美術品、高級車、プライベートジェット、プライベートヨット、高級ワイン・スピリッツ、高級食品)も同様に縮小しましたが、回復ペースは個人向け商品を上回る可能性があります。但し、体験型消費は観光に依存しているため、今後のコロナ状況に大きく影響を受けます。
社会的課題に対する問題意識の高まり
2020年は、持続可能性や環境面の課題に加えて、多様性やインクルージョンが注目されるようになりました。2019~2025年の間に同市場における購買額で180%成長すると見込まれている若い世代は、社会的、人種的な不公正に取り組むことを重視しています。このような「活動家」の消費者は、自身のビジョンや、目的意識に合致するブランドを支持します。
この業界は2030年までに劇的に変わると類推されます。今後は『高級品業界』という括りではなくなり、『文化と創造性に秀でた商品が入り乱れる市場』になっていくことが予測され、高級品業界の企業には、大胆な思考の転換が求められることになると考えられます。
ベイン・アンド・カンパニーについて
ベイン・アンド・カンパニーは、未来を切り開き、変革を起こそうとしている世界のビジネス・リーダーを支援しているコンサルティングファームです。1973年の創設以来、クライアントの成功をベインの成功指標とし、世界37か国59拠点のネットワークを展開しています。クライアントが厳しい競争環境の中でも成長し続け、クライアントと共通の目標に向かって「結果」を出せるように支援しています。ベインのクライアントの株価は市場平均に対し約4倍のパフォーマンスを達成しており、私たちは持続可能で優れた結果をより早く提供するために、様々な業界や経営テーマにおける知識を統合し、外部の厳選されたデジタル企業等とも提携しながらクライアントごとにカスタマイズしたコンサルティング活動を行っています。
商号 : ベイン・アンド・カンパニー・ジャパン・インコーポレイテッド
代表者 : 奥野 慎太郎(日本における代表)
所在地 : 東京都港区赤坂9-7-1 ミッドタウン・タワー8階
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