Press release

2014年のプライベート・エクイティ業界は、過剰ともいえる投資資金余力と記録的な超低金利の影響により、売り手としては極めて有利だが買い手としては厳しい年に ~「プライベート・エクイティ・レポート2015」~

2014年のプライベート・エクイティ業界は、過剰ともいえる投資資金余力と記録的な超低金利の影響により、売り手としては極めて有利だが買い手としては厳しい年に ~「プライベート・エクイティ・レポート2015」~

  • 2015年3月3日
  • min read

Press release

2014年のプライベート・エクイティ業界は、過剰ともいえる投資資金余力と記録的な超低金利の影響により、売り手としては極めて有利だが買い手としては厳しい年に ~「プライベート・エクイティ・レポート2015」~

NEWS RELEASE

幅広いエグジット方法からの投資回収益が、厳しい市況下にある新規投資額を上回り、プライベート・エクイティのリミテッド・パートナー・キャッシュ・フローは4年連続でポジティブに

バイアウト・ファンドによるエグジットの世界的に見た記録的増加(案件数で13年比15%増加、金額で 13年比67%増加)によって、2014年のプライベート・エクイティ(以下、PE)のエグジットは急激に増加しました。

PE業界に対するアドバイザーとして世界的なリーダーであるベイン・アンド・カンパニーが発表した"プライベート・エクイティ・レポート 2015" によると、エグジット時の資産価値が上昇したのは、上半期に非常に活況であったIPO市場と、非常に価値が大きい資産を戦略的な買収先に売却した案件によるものだという見方が示されています。

IPOによるエグジットは特に欧州で活発で、バイアウト・ファンドによるIPOは案件数・総額ともに倍増し、史上最高の一年となりました。アジア太平洋地域におけるPEによるIPOの総額は5倍の630億ドルとなりました。

ベインは、世界中のありとあらゆるPEファンドとあらゆるタイプの投資家が有する過剰な投資資金余力と、豊富で低金利な負債とが相まって、2014年はPEにとってはエグジットには極めて好ましい一年であったとしています。しかし、好調な株式市場のバリュエーション及び激しい競争と資産価格の高騰に直面した買い手にとっては、厳しい一年でした。世界のバイアウト・ファンドによる新規投資は案件数で2%上昇しましたが、総額では前年比2%低下しました。

ベインのPEプラクティスの代表者であり、プライベート・エクイティ・レポートの筆頭著者でもあるヒュー・マッカーサーは「昨年は間違いなくエグジットの年でしたが、それは多くの買い手に警鐘を鳴らしました。世界的な資産流動化の上昇と超低金利がアセットの評価額をつり上げ、PEのターゲットである非上場企業の買収時のマルチプルを高めているため、投資に対して今までの同等のリターンを得るのは今後より一層難しくなるでしょう。」と述べています。

最終的には様々なエグジット方法と厳しいディール環境の影響で、リミテッド・パートナー(以下、LP)のキャッシュ・フローは4年連続でポジティブとなりました。LPにとってキャッシュ・フローの入超がこれほど長期間にわたって継続するのは、PE業界では初めてのことです。機関投資家は、運用成績の良いアセットクラスに再投資を続けています。PEに再投資しようとしているLPが多額の資金を保有しているため、運用成績の高いトップ・ファームは容易に資金を調達することが可能ですが、その傾向はそれ以外のジェネラル・パートナー(以下、GP)にも広まってきています。

ベインのマクロ・トレンド・グループによると、過去25年間にわたり投資家のバランスシート上の金融資産総額は2010年には600兆ドルにまで世界的に増加し、2020年までにはさらに50%増加し900兆ドルに達すると予測されています。記録的な投資待機資金(ドライ・パウダー)の余力と、魅力的な投資機会が限定されることで、投資先をめぐる競争の激化と価格高騰は当面継続する見込みです。

ベインのレポートにおけるその他の主なハイライトは以下のとおりです。

PEファンドのLPは「影の資本」と呼ばれる、機関投資家が案件ごとに共同出資やセパレートリー・マネージド・アカウント(SMA)、直接投資等の枠組みを通して資本を投下する試みをより多く行うようになっています。影の資本が増加することによるリスクのうち、LPGPと直接競合することによる脅威は小さく、GPの提供サービスをディスカウントすることと引き換えに管理資産(AUM)を増加させることでPE業界の経済性が変化するかどうかが、大きなリスクであるといえます。

投資家は米国へのフォーカスを再び新たにしています。ベインのマクロ・トレンド・グループは、2020年ないしそれ以降までにわたり米国の経済成長を促進しうるいくつかの長期的な上昇傾向を指摘しています。米国の市場には買い手のターゲットとなりうる会社が多く存在していますが、同時に最も成熟した競争の激しいPE市場でもあります。ベインは、企業価値が1億ドルから5億ドルの中規模企業のうち、PE保有企業の割合は2000年の8%から2013年では23%と、ほぼ4社に1社まで上昇していることを明らかにしました。

近年組成されたPEファンドの運用成績の上位から下位までの幅が狭まっており、PE業界が得られるリターンは減少しつつあります。1~2件のディールの影響で、ファンドの運用成績は大きく変化します。ベインの分析から、ファンドが組成されてから7年程度経過しないと、投資家は最終的な運用成績に確信が持てないということが示されました。

ベインは、2015年以降も過剰な投資資金余力は継続し、PE投資家をこの先も悩ませると予想しています。利回りを求める債券投資家が所有する多量の低コストの負債が価格を押し上げ、高価格を維持させます。同時に、魅力的な投資リターンのための目一杯の価格でのエグジット準備のために、より長期にわたりアセットを保有することが標準化すると思われます。

マッカーサーは、「 豊富な資金を持つ多くの投資家がPEの投資リターンを均質化させるという、これまでとは異なる世界に突入したため、運用成績の勝者を見出すことが難しくなってきました。過去の運用実績は、必ずしも将来のリターンを予測するための有効な指標では無くなり、結果的にPEは市場平均を大きく超えるリターンを生み出すという本来の姿に戻るでしょう。」と述べています。

ベインは、より多くのPEファンドがこのような市況に呼応して、市場価格が高騰する前に新しい投資テーマを設定する創造的な方法を求めると予測しています。特にGPは、オークション時に満額を支払う準備をして参加するような競合と、自らを差別化することができる持続可能な案件のソーシング・モデルを開発中です。

また、ベインはアセットの価値が高止まりしている時代においては、GPはもはやリターンを増幅するマーケットベータを見込むことはできないと警告しています。常に上位4分の1の運用成績を狙うGPは、どの投資テーマを追求するかを熟考し、求めるアセットに対して優れたデュー・デリジェンスを行い、鍛練された持続可能な価値向上プロセスをポートフォリオのすべての企業に適用する必要があります。

ベイン・アンド・カンパニーの「プライベート・エクイティ・レポート」についての詳細や、パートナーへの取材をご希望の方は、ベイン・アンド・カンパニー・ジャパン、マーケティング担当までご連絡ください。

レポート(英文)のダウンロードはこちらから

ベイン・アンド・カンパニーについて

ベイン・アンド・カンパニーは、未来を切り開き、変革を起こそうとしている世界のビジネス・リーダーを支援しているコンサルティングファームです。1973年の創設以来、クライアントの成功をベインの成功指標とし、世界40か国65都市にネットワークを展開しています。クライアントが厳しい競争環境の中でも成長し続け、クライアントと共通の目標に向かって「結果」を出せるように支援しています。私たちは持続可能で優れた結果をより早く提供するために、様々な業界や経営テーマにおける知識を統合し、外部の厳選されたデジタル企業等とも提携しながらクライアントごとにカスタマイズしたコンサルティング活動を行っています。また、教育、人種問題、社会正義、経済発展、環境などの世界が抱える緊急課題に取り組んでいる非営利団体に対し、プロボノコンサルティングサービスを提供することで社会に貢献しています。

商号  : ベイン・アンド・カンパニー・ジャパン・インコーポレイテッド
所在地 : 東京都港区赤坂9-7-1 ミッドタウン・タワー37階
URL   : https://www.bain.co.jp