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NEWS RELEASE
プライベートエクイティ・ファームにとって、ポートフォリオ全体にわたる 差別化・価値創造に注力し、将来の市場環境の変化に備える必要性が高まる
ベイン・アンド・カンパニーは、世界のプライベート・エクイティ(以下、PE) 業界についての第7回目の年次レポートとなる「グローバル・プライベート・エクイティ・レポート2016」を発表いたしました。2015年のPE業界は、世界経済の減速や株式市場の乱高下、激しい競争の結果マルチプルが最高値をつけた市場環境にも関わらず、堅調な業績を残しました。ディールメイキングは2014年からの極めて継続的なPE投資サイクルの下、2015年も堅調に推移しております。世界のバイアウトに関するディール価格は2014年度から少し上昇し2,820億ドルに達しましたが、ディール数は昨年度から14%の減少となりました。近年続く激しい競争から、PEファームにとっては差別化を行う必要性が高まっています。
過去10年にわたりPE業界は高いボラティリティに苦しんできましたが、直近5年間で立ち直りの早さを証明してきました。PEのリミテッド・パートナー(以下、LP)は5年連続でディストリビューションがキャピタルコールを上回り、キャッシュ・フローはポジティブとなっています。一方で、ジェネラル・パートナー(以下、GP)にとっては、投資先を見つけ、投資テーマを明確化し、クローズ後の企業価値を創造することがかつてなく重要になっており、これらのスキルの向上を急いでいます。また、昨年度は金融危機以来、資金調達には最高の年度となりました。
ベインのPEプラクティスの代表であるヒュー・マッカーサー(Hugh MacArthur)は、「この10年はPE業界にとって劇的なものでした。しかし、我々が何度も目にしているように、賢明な投資家たちはマーケットの難題を乗り越え、必要な資金を投資し、継続的な成長のために必要なリターンを回収する方法を見つけてきました。この「何が何でも」というメンタリティは、2016年のいくつかのマーケットでの金利引き上げや見通しの悪いマーケットでの景気後退リスクをうけて、今まで以上に重要になるでしょう」と述べています。
2015年のPE業界の主要指漂
昨年GPがバイアウトファンドのために調達した資金は、2014年度に調達した資金よりも11%低い1,750億ドルとなりました。また、2015年のGPの資金調達環境は2007年の好況期以来最良となりました。ベインの調査によると、結果を残しているPEファンドの上位25%はかつてない早さでディールをクローズし、また、かつてない規模の資金を調達しています。バイアウトファンドにおいては40%のファンドが6ヶ月以内にファンドレイジングをクローズしています。さらに、2015年度に資金調達の目標額に到達したファンドの割合は、金融危機前の2007年の好況期以来最大となりました。LP資金の流入が大きく、平均すると下位25%のファンドでさえも昨年度の資金調達の目標額に到達しています。LPは今なお資金の投資先を、共同投資(Co-investment)や間接市場を含めて探っている状況です。
地域別に見ると、2015年のバイアウトは、強い米国経済を受けて北米で伸びている一方、アジアや欧州では減少しています。世界全体でのバイアウトのディール価格は2,820億ドルに及び、世界金融危機以降の最高値を更新し、投資待機資金(ドライ・パウダー)は最高値に近い4,600億ドルとなっています。2015年の初頭から高かった米国での資産評価額は、既にEBITDAの10.1倍まで上昇しています。
バイアウト関連のイグジットは、2014年に最高値をつけた4,560億ドルから少し低い4,220億ドルに終わりました。しかし、年度末でのディール報告数は1,166件に及び、資産の売却額は過去最高値にわずかに劣るレベルにまで増加しました。バイアウト関連のイグジットが2,230億ドルとなった北米市場と同様に、世界全体でのイグジットも活況を呈しています。アジア太平洋地域でのイグジットは850億ドルに達し、直近5年の実績に沿った取引額となり、ソブリン危機や財政難に苦しむ欧州においてさえも、GPは1,430億ドルの資産の売却を行いました。欧州においてこれを超えたのは過去20年において2014年と2007年の2回のみであり、たいへんな活況を呈していると言えます。
一方で、「PE業界は厳しいディール環境になり続ける」とマッカーサーは指摘しています。膨れ上がった投資待機資金を活用したいというニーズは、ファンド間での新しいディールをめぐる競争を激化させています。さらに、コーポレートは低い資本コストを利用して、ファンドと新しいディールをめぐり競争を仕掛けてきています。その結果、マルチプルは米国では過去最高値に跳ね上がり、欧州でも過去最高に近い値となっています。本傾向は債券市場の混乱により深刻化し、スプレッドが広がり、一部のディールが資金調達への力を強めた昨年度後半にとりわけ顕著なものとなりました。
ベインでは、投資活動のピークであった2005年から2010年の期間よりも遥かに少ない最近の投資は、今後5年間のイグジットの減少やLPへのキャッシュ・フローの減少へと繋がると見ています。この平準化への回帰は2006年、2007年の2年間にわたる巨大なディールの山をようやくPE業界が消化したということを意味しています。
今後10~20年は、PE業界の大きな変化が予測されます。下位50%のファンドは資金を調達するのが困難になっていくでしょう。とりわけ先進国市場の過当競争の中においては、資産を買収する前に、それらを用いて何ができるかを理解することがPEファンドにとっての大きなチャレンジとなるでしょう。PEファームは、買収する企業の資産に劇的な影響を与え有効に活用することができないのならば、投資に見合ったリターンを回収することは難しくなっていくと予測されます。
高まる差別化の必要性
現在の良好な資金調達環境が徐々に後退していく中、GPは優れたリターンを実現するために、鋭く磨き上げ、差別化された戦略をもつことをLPに示す必要が生じると考えられます。LPもまた、多くのファンドを見るのではなく、優れたリターンを達成している数少ないファンドへの投資に集中していくと予測されます。需給のバランスがLP側へと寄り戻るにつれ、ファンドの差別化された戦略が資金調達のためにかつてなく重要になるでしょう。戦略には多くの差別化方法があり、今後数年でますます重要になる「将来性のある方法」を多くのファンドが試みています。
- いくつかのPEファームは、投資におけるスイートスポットに照準を合わせて、それぞれのファーム特有の強みやケイパビリティ、過去の成功のパターンに最も近い特徴のあるものに絞ってディールを行っています
- その他のPEファームはマクロ経済のトレンドを捉え、投資に優位に立つために、投資テーマに関する洞察を深めています。重要なトレンドに関する深い理解を元に、長期的に成長の見込めるビジネスやセクターを見極めています
- より多くのPEファームが、ファンドのポートフォリオ価値を高める再現可能なアプローチの開発にリソースを動員しています。それぞれのファームが特有の投資哲学や投資先への選好を反映した価値創造モデルを適用すると同時に、ポートフォリオ・カンパニーの価値を高める手法が首尾一貫し、照準を絞っていることを保証しています
マッカーサーは、「かつてはディールモデルから15%減となっても、十分なリターンを回収することができました。しかし、今日では資産を戦略的に変身させることがかつてなく重要になっています。時には、魅力的なリターンを実現するために、従来のディールであれば5年目に達成すべき数値を3年目に達成する必要があります」と述べています。PE業界が高い購入価格と高いリターンのしきい値の中で価値を見出そうとするのであれば、再現可能なアプローチこそがクローズ後に極めて重要な役割を果たし、取引をまとめた後でさえも、ディールからより多額の価値を引き出すことができるのです。
景気後退前の対策が必要
PE業界が下降線をたどり始めるよりも前に、PEファームは不況に備える必要があります。直近2~3年に買収した資産は、とりわけ経済の変化を受けやすいと言えます。近年の高いマルチプルや経済が好調な時期に買収した資産の多くはできるだけ早くイグジットすべきだと考えられます。予期していたより長期間資産を保有しているGPは、経済の向かい風から資産を守り、状況が上向いた時に資産価値を高める方法を考える必要が出てくるでしょう。
「競合ファンドを凌ぐ結果を出す責任はGPにあります。そのためには戦略が必要です。それは実際に問題が起きてからできることではありません。だから、今すぐ戦略を策定・実行しなければならないのです」とマッカーサーは締めくくっています。
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