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      Bain Classic | 論説

      企業価値最大化のための変革 -トランスフォーメーション-

      企業価値最大化のための変革 -トランスフォーメーション-

      著者:Manny Maceda, Michael Garstka and Charles Ormiston

      • min read

      論説

      企業価値最大化のための変革 -トランスフォーメーション-
      ja

       1990年代後半の歴史的なITブームが証券仲介業務を再定義した後、ITバブルは崩壊し、2000年にはチャールズ・シュワブ・アンド・カンパニーは行き詰まってしまった。大きなショックを受けた投資家たちを金融サービス業界が慌てて市場に引き戻そうとしている時、シュワブはメリルリンチのような伝統的で包括的なサービスを提供する証券仲介業者と、イー・トレードのようなテクノロジーを駆使した新種の低価格仲介業者によって上下から板挟みになった。それから3年の間に、シュワブは仲介手数料収入の6割を失い、市場価値は8割低下することとなった。

       同社の創業者であるチャールズ・シュワブ氏にとって、株価の暴落は決定的な出来事だった。同社は強いブランドと資本構成によって十分な耐久力を持っていたが、自社の戦略に再度焦点を当て、6億ドルのコストを削減し、さらに深い顧客ロイヤルティを獲得するといった複数年に及ぶトランスフォーメーション(企業変革)計画を打ち出した。2008年には効果が明確に現れた。シュワブの株価は3倍以上になり、フルサービスを提供する競合や低価格サービスを提供する競合を一貫して上回る勢いで、中間層の投資家たちの広大な市場から資産を集めたのだ。

       優れたリーダーは、このような極めて重要な局面をうまく乗り切る。なぜなら、そういった局面を自社の運命を再形成するチャンスだと認識しているからだ。変化を予想し正面から立ち向かうことが、企業を失速させるか、それとも「フルポテンシャル・トランスフォーメーション(企業価値最大化への変革)」と我々が呼んでいるものを推し進めるかを左右する。導入の過程では、「企業価値最大化への変革」のビジョンを特定し、それを実現するための適切な計画を考えることが重要だ。明確な目的と手段を設定することで、投資やケイパビリティ(特定の能力)の開発、そして変化に対して企業がコミットし、それが競合をしのぎ持続可能な成長を実現することにつながるのだ。

       「トランスフォーメーション」という言葉はビジネスにおいて使い古された言葉であり、手っ取り早いリストラから本格的な企業の救済まで、ほとんど何でも意味してしまう。我々は「フルポテンシャル・トランスフォーメーション」を、形勢を一変させるような結果を生むという明確な目標とともに、事業の財務、オペレーション、そして戦略的な軌道を改める組織横断的な取り組み、と定義する。

       我々の経験では、幅広いトランスフォーメーションの必要性を特定し実行することは、二つの課題を引き起こす。どのようなトランスフォーメーションにも不可欠な最初のステップは、現在と将来の両方における企業の競争力を明確に分析することで、企業がどのように変化しなければいけないかを大胆に見通すことである。しかし、組織がリーダーたちの視線を揃え、変化に対処し混乱を克服するにあたり、現実的に何ができるかを評価することで「理想的な」ビジョンを再調整することもまた重要である。

       戦略的な課題と組織的な課題のバランスをとることは、変化を起こすための最も実用的な背景を確立し、トランスフォーメーションの適切なスピードや度合いを決定する。絶対ではないにせよ、そうすることで経営を確固たるものとし、投資家を味方につけ、早期の説明責任を確立し、変化を持続的なものとする組織的、文化的な進化を起こすといった、極めて重要な結果をもたらすことになる。相互関係にある以下の3つの質問に対する答えによって、個別企業のための適切な構造を創りあげることができる。

      1. どういった種類のトランスフォーメーションが必要か

       必要な変革の特定は、予想されるテクノロジー、市場環境や競合状況の変化の渦中で企業が生き返り、成長を持続させるには最終的にどうあるべきかを診断することから始まる。それは、企業のビジネスに劇的な変化を目論む上でパワフルな目標となる。しかし同時に、企業の出発点(現状)に対する現実的な理解も必要である。つまり企業が現在どれほど健全か、あるべき姿に達成するためにはビジネスモデルをどの程度転換する必要があるかといったことである。これらを見積もることで企業がどれほど遠くまで、どれほど速く計画を進める必要があるかが明確になり、到達可能な目標地点を設定することができるのだ。

      2. 適切なステップはどうあるべきか

       企業のトランスフォーメーションに対する取り組みではそれぞれ一連の段取りが必要であり、戦略、オペレーション、組織、顧客志向、そして資本構成といった5つのコアとなる柱に沿って熟考された順序で取り組むべきである。理想的には、その一連の流れは企業戦略の深い分析とその戦略に対する確信から始まる。しかし、企業の特徴的な組織背景やビジネスモデルの健全性によっては、他のケイパビリティ構築に取りむ方が意味があることもある。財政状況はどれほど健全か、適切な仕事に適切な人材が十分配置されているか、取締役会からの支持はあるか、企業文化はどれほどの変化に対応できるか。これらの質問に答えることによって、適切な道筋は比較的明瞭になるだろう。しかしそのためには、一歩ずつ変化を起こす柔軟で漸進的なアプローチが必要だ。

      3. トランスフォーメーションをどのように管理するべきか

       変化の大きさや性質により、変革プロセスの各段階では必ず特有なリスクが発生する。それらのリスクを最小化する最もよい方法はなにか。変化への取り組みを組織横断的に管理し、調整し、審判役となる何らかのトランスフォーメーション推進部門が本社に必要なのだろうか。もしくは、リーダーシップチームは、現場の管理者が規定の業務範囲内で調整された結果をもたらすことを期待していいのだろうか。その正しい答えは、各社の実態や企業文化によって異なる。もしトランスフォーメーションが全社的で、早急に実行しなければならないものであれば、本社の力強い執行部が必須となる。しかし企業が、もし財務的な問題もなく段階的なトランスフォーメーションを熟慮する余裕があるなら、より多くの選択肢が考えられる。ある企業は本社にトランスフォーメーション推進部門を設置する方がよいだろうし、他の企業は現場で変化を起こしていく方がよいだろう。

      どういった種類のトランスフォーメーションが必要か

       皮肉なことに、適切なトランスフォーメーションが何かを特定することは、進化し成長している企業よりも困難の渦中にある企業の方が簡単である場合がある。成長が鈍化する前にその兆候を予測出来る企業は、効果的なトランスフォーメーション戦略を立案するための時間と柔軟性を十分に確保することができる。しかし変化を起こさなければ今にも燃え尽きてしまうような状況下でなければ、変革を起こす適切なタイミングやそのインパクトの大きさはそれほど明白ではないだろう。解決策を見定め、組織内に行き渡らせることは困難を極める。

       企業のリーダーは以下の2つの問いに焦点を当てることによって、潜在的な変革の実現に向けて、自社の置かれている現状を正しく定めることができる。一つ目は、成長を持続(もしくは改善)させるために自社のビジネスモデルをどれほど変化させる必要があるか、そして二つ目は、自社の現在のビジネスは財務的および競争力においてどの程度強いか、という点である。これらの問いに答えることによって、自社が必要とする変化の大きさと、その変化をどれほど早期に展開すべきかがわかるだろう。そして、その変化を最も効率的に管理し、どのような順序で行われるべきかを示唆することによって、トランスフォーメーションに必要な準備が整うことになる。また、明確で事実に基づいた分析に根ざした取り組みは、組織内にコンセンサスを構築するのに役立つ。

       我々の経験では、企業がどのようなタイプのトランスフォーメーションを必要としているかによって、4つの象限に分けられる。(図1)

      transformation-figure-01_embed

      •       左下に位置する企業は、本質的な救済が必要な状況である。最悪なケースでは、悪化する財務的状況と崩壊した戦略によって、選択肢は一つしかない。「大成するか撤退するか」だ。生き残るためには大規模なトランスフォーメーションが必要で、限られた時間の中で迅速に、一から再構築するための徹底的なプログラムを必要とする。ポラロイドやブロックバスターの事例を考えてみて欲しい。

      •       左上に位置する企業は、ビジネスモデルは妥当であるが、財政状況が悪い。ここに位置する企業が取るべき方策は、極めて重要な課題領域にしっかりと焦点を当てて企業再生させることだ。ここではトランスフォーメーションによる変化の度合いは非常に大きく、スピードも速くする必要がある。しかし、変革の取り組みは全社的ではなく特定の課題を抱える箇所に限られる。10年前のコンチネンタル航空が、この象限にあてはまる。

      •       右下に位置する企業は、ビジネスモデルが成熟するにつれて失速している。市場の変化により早々の戦略立て直しを必要とするが、相対的に強い財務力および競争力を保持するため、企業の将来のための変革へ計画的な手段を採ることができる。競合状況によって最終的には抜本的な変化を必要とするが、ここに位置する企業には、念入りに診断し実行に移すまでの時間が十分にある。フォードやIBMが、各業界の構造変化に応じてどのように大転換を行ったかを考えて欲しい。

      •       右上に位置する企業は十分な耐久力と強固な戦略を持っており、強さを保持している。しかしこれらの企業のリーダーは全潜在能力を引き出すのに絶えず躍起になって、あれこれ考えをめぐらせすぎている。市場内での強いポジションを持つので、相応の時間と人材を投資してアプローチを熟慮することができる。この場合のトランスフォーメーションの変化の度合いはそれほど大きくなく、変革のスピードもゆっくりしているが、しばしば、企業が目指すべき方向へ向かうための重要な軌道修正となる。インテルやP&Gが好例である。

      適切なステップはどうあるべきか

       上記の構造はきわめて一般化された概念に過ぎないが(これほど簡単に型にはめて考えられる企業はほぼない)、これを利用して変革のインパクトの大きさや実行のスピードを測ることは重要な意味をもつ。企業のリーダーが、変革を企業全体に広げていく際の最も論理的な順序を検討する上で役立つのだ。企業のリーダーは、軌道修正するための一連の「レバー」を持っている。つまり、勝つための戦略を定義し、顧客志向を磨き、オペレーションの優位性を構築し、高いパフォーマンスが出せる組織を創造し、企業価値を最大化し、デジタル技術で業績を最適化する、ということである。また「結果を出す」ための明確なプランを立てるケイパビリティを強化することができる。それは説明責任を構築し、早期に勝利を実現し、組織全体のコンセンサスを醸成する。(図2)

      transformation-figure-02_embed

       どこから取り組み始めるべきだろうか。すべてのトランスフォーメーションは、適切な核となる戦略を立案し確認することから始めるのが理想的である。どの顧客に注力すべきで、その顧客に応対するためにはどういった組織が最善なのか、といったことをすべて規定するからである。しかし、特に企業の財務状況が切迫している時などには、他により差し迫った注力が必要なことが存在することも多い。財務諸表の改善や、特定の脅威に対応するため、組織構造の再調整が必要な時などもあるだろう。それは調整が喫緊の対応課題であることを意味し、戦略の再設定は他の取り組みと同時平行でなされなければならない。

       トランスフォーメーションの適切なステップは、現状組織が抱える複雑な状況を反映する変革のリスク特性にも大きく依存する。主要株主やCEO、経営陣は、全面的な変革を起こす必要性について同じ立場に立っているか。修正が必要なものが何かについて、合意されているか。しばしば、企業の文化は変化に対して深く抵抗的で、現状に留まろうとする。経営陣の層が薄く、変革を効率的に実行することが出来ないことや、組織への負荷が大きすぎて新しい取り組みに対応することが出来ないということもあるだろう。企業のリーダーは15の問いに答えることで、これらの組織的リスクをトランスフォーメーションの各段階で評価する必要がある。(図3)

      transformation-figure-03_embed

       トランスフォーメーションの理想的な順序と現実の組織背景のバランスをとることは、成功に欠かせない要素である。それは、特定の分野で早期に成果を生む事によってリーダーシップメンバーから賛同を得る、ということを意味するかもしれない。新しい戦略のためにより包括的な一連の取り組みを開始する前に、重要な役割を担うマネージャーと、求められる変化を実行に移すことができる人との配置換えが必要になることもある。そのようなときは、理想的なステップよりも反復アプローチが採択される。あるべき姿の到着点にはフォーカスし続けていなければならないが、変革の順序は段階的であるのだ。

       例えば2000年にシュワブが割引仲介業者と包括的サービス仲介業者の間で閉めだされていた時、同社はその強固な財務状況によって、効果的な変革を順序立てる時間と柔軟性を持ち得ていた。しかし、競合がシュワブの顧客を奪っているにもかかわらず、同社のトップリーダーたちは修正を必要としている事柄に合意せず、その組織が一度にどれほどの変化に対処できるかも不明確だった。

       競争の激しい状況下でシュワブにとって最も論理的な策は、戦略を刷新し、マネジメントの時間を浪費している副業を止め、再度適切なコア顧客(つまり多くの裕福な投資家)に集中することだった。しかし最も差し迫った懸念はコストの問題だった。オペレーションやITの複雑性が増してきていたため、競争力のある価格付けが不可能になっており、シュワブの新規顧客獲得コストは膨大になっていたのだ。

       最良の解決策は、企業のトランスフォーメーションを同時平行して順序付けることだった。シュワブは大規模信託業務などのノンコア資産を売却することで、戦略的な作業に取り組み始めた。それとほぼ同じ時期にシュワブは組織の単純化、バックエンドのプロセスの改善、支社数削減、非効果的な宣伝の取り止めなどによる、6億ドルのコスト削減に取り組み始めた。

       1年も経たないうちに、同社のリーダーたちは戦略的な再配置の第二段階に移行した。小売と法人といった、明確に定義された二つの顧客グループに組織を再度集中させ、顧客ロイヤルティを戦略ツールとして導入した。同社は顧客とのすべての接点において顧客体験を向上させることに熱心に取り組み、極めて重要な富裕層投資家からのネット・プロモーター・スコア(NPSⓇ)を劇的に改善させた。そしてこれが、売上と株価の急激な復活の土台となった。

       シュワブがトランスフォーメーションを順序立てて行ったことは、いくつかの重要な利益をもたらした。ポートフォリオ戦略を再考し不要な資産を早々に売却することでコスト削減に集中し、組織が維持すべき部分だけに取り組む事ができた。コスト削減で捻出された資本は顧客に投資され、早期の勝利はさらなる幅広い変革への支持を構築した。顧客ロイヤルティキャンペーンをその工程の最後で行ったことは、大きなコスト削減実施後のシュワブに安定と一息つく機会を与えた。また数ヶ月にわたる組織改革は、顧客が抱える主な難所を明らかにした。

       シュワブの例が明らかにしたのは、どうトランスフォーメーションのステップをデザインするのがいいのかという問いに対して、一つの適切な答えがあるわけではないということだ。しかし我々の経験では、順序を間違えると余計にコストがかかり、非効率的な結果になることもある。

       ある大手テクノロジー企業が数年前に事業が行き詰まり、市場シェアを失いはじめた事例を考えてみよう。その企業は急激な成長と成功を収めていたため、リーダーたちは幅広いトランスフォーメーションについて考えることに前向きではなかった。経営幹部たちは、企業全体にわたる戦略は堅牢だと信じ、新しい方向性について熟慮する気になっていなかった。

       同社は売上の低下を食い止めるために、主要顧客セグメントにフォーカスした一連の新規事業を中心とした組織を再構築した。その結果いくらかの短期的な改善はみられたが、持続可能な将来の成長の源泉となるような本質的な戦略的取り組みには対処していなかった。組織を再構築した後に行われた分析で、最も有望な商品セグメントにターゲットを定めることが、売上上昇につながるということがわかった。そしてその結果、当初の組織を再編し、適切な製品セグメンテーションに基づいたモデルに置き換えなくてはならなかった。早く、そして戦術的に動くため、同社は俯瞰してものを見ることができていなかったのだ。間違った順序付けをしてしまったことにより、減退を取り戻すための重要な取り組みに1年かそれ以上余計に時間がかかってしまった。

      トランスフォーメーションをどのように管理するべきか

       適切な変革のステップを決定するのと同じように、トランスフォーメーションをどのように管理するかを決めることは重要である。自社の企業文化や取り組みの大きさによって、解決策が決まる。一方の企業では、トランスフォーメーションを主導する幹部人材が率いる、人材豊富で権限を持つ企業変革の執務室がトランスフォーメーションの運営を行う。他方の企業では、既存の現場組織が直接トランスフォーメーションに取り組む。それらの真ん中に位置するような企業では、その両方の側面を持つ。ある一定の時間をトランスフォーメーション推進業務に割くシニアマネージャーが、全体をコーディネートするプログラムオフィスを率い、結果の実現に向かって取り組み、さまざまな混乱を解決していくのだ。(図4)

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       企業文化が中央集権ではない企業や、経営状態が健全な企業など、通常の指揮系統のままトランスフォーメーションを管理してもうまくいく場合もある。取り組みが全面的な変革というよりは、ある事業の一部分のみに関係するものである場合は、現場で管理する方がより混乱が少ないかもしれない。現場のマネジメントが十分に強固で団結している場合は、トップリーダーたちは事業長に適切な結果をもたらすことを期待できるかもしれない。

       しかしトランスフォーメーションの範囲と複雑さが増したり、財務的状況により変化のスピードが"強制的"になったりするにつれ、より高度な統合とコントロールをする必要性が増大する。大規模なトランスフォーメーションは非常に多くの場合、既存の構造の範囲内で取り組むのは実用的でないため、現場組織そのものの再設計を伴う。現場の監督者に事業や組織の再構築を求めながら、同時に日々の業務成果を求めることは難しい。最終的には調整が重要になってくる。広範なトランスフォーメーションの一部が他と重複するとき、それらの重複を処理するには、より強力な統合的部署が調整を行うのが望ましいといえる。

       我々の経験では、成功する全面的なトランスフォーメーションは、非常にスキルの高い経営幹部が率いる独立した組織と、社内でもっとも創造的で才能のあるマネージャーから成る職能上の枠を超えた組織を必要とする。それらの組織は一定期間現場から切り離され、企業変革の課題を指揮し、結果をもたらし、混乱を解決することを任されているべきである。そうすることでその他の業務から解放され、混乱を最小限に抑えながら日々の業務を営む事ができる。

       適切な役員を昇格させ、トランスフォーメーションのプログラムを指揮させることは極めて重要だ。その役割は強硬なマネージャーと、明敏な政治家と、変化を促しきっかけを与える人を混ぜあわせたようなものだ。それは、リーダーシップなど幅広い能力を備え、組織内のさまざまな部署や階層から強い信頼を得ているシニアな役員でなくてはならない。トランスフォーメーションのリーダーは、変革のプログラムを設計し、その多くの変動要素を管理することに大いに手腕を発揮する。そのリーダーは実行時のリスクを明確にし、それをしっかり管理するための勇気や粘り強さを備えていなければならない。同時にその役員はプログラムを組織により広く周知し、チームのモチベーションを上げ、主要な社内関係を構築し、矢継ぎ早に起こる変化には必ずついて回る衝突をうまく乗り越えていかなければならない。変革というものは、その定義どおり破壊的である。リーダーの役割は変革への取り組みを軌道に乗せ、混乱を最小限にとどめ、持続的な結果をもたらすことだ。

       ある大手ネットワーク設備企業にとって、企業変革プログラムの運営チームを招集することは、数年にわたる変革の取り組みを特定しデザインする第一歩となった。そのゴールは複雑性を減らし、意思決定のスピードを早くし、社内の隠れたコストを探索することで、自社のコアとなる戦略を生き返らせることであった。同社のリーダーたちはトランスフォーメーションを率いる役員の候補を特定するのに1ヶ月を費やし、幅広い経験と主な現場マネージャーの多くとの親密な関係を持っている、サプライチェーン担当の上席副社長を選んだ。

       その副社長は1ヶ月をかけて、エンジニアリング、オペレーション、そして商品を市場に出すチームに大きな変化を引き起こすトランスフォーメーションを先導するための小さなチームを結成した。これは簡単ではなかった。何人かの役員は、社内で全く人気のなさそうなこの取り組みから降りたがった。最終的には、業績はよいが社歴の浅い、つまり各現場組織における変革の戦略を特定し実行に移すためのチームを作れる人たちの集団を選んだ。

       「トランスフォーメーション管理室」は、政治的そしてカルチャー的な複雑性を管理しながら、変革の取り組みの確定、優先順位付け、そして調整対応にすべての責任を持つ。それは予算を管理し、200あったプロジェクトを企業のトップマネジメントに承認された約60にまで削ることも含んだ。

       トランスフォーメーションを率いる役員とそのチームは、現場マネージャーがビジネスケースに磨きをかける手助けをするためイニシアチブのレビューを行った。長期イニシアチブと早期の成功を証明する短期プロジェクトを交えて、プロジェクトに優先順位をつけた(一つの良い例は、不必要な複雑性を生んでいる何千もの承認手続きを廃止したことである)。彼らはまた、ファンクション間で発生する混乱を管理し、結果をモニタリングするという極めて重要な役割を果たした。そして、全社にわたる幅広い変革の取り組みに関連する資金調達やサポートで協力が必須であった財務やIT部門と本質的な関係を形成した。

       シュワブは、ほぼ同じような方法でトランスフォーメーションを担当するプログラムオフィスを設置した。トランスフォーメーション担当の役員は、ベテランの上級役員であった。その役員は施策の順序と優先順位付けのための幅広い権限を持ち、企業変革を診断し実行に移すために8割の時間を費やすシニアエグゼクティブでチームを編成した。

       しかし、これらの企業のトランスフォーメーションの取り組みの中で一つ異なっているのは、シュワブのマネジメント方法は企業変革プログラムの2年目にはより分権的な構造に進化していたことだ。時折痛みを伴う初期のコスト削減と組織再編制においては、本社のプログラムオフィスによってこの重大で速い変化を企業の隅々にまで行き届かせることが必要だった。しかし企業変革が顧客接点で顧客ロイヤルティを構築する段階に移った時、その責任は徐々に現場に戻っていった。ロイヤルティに関連する一連の新しいイニシアチブにより、現場のマネージャーは顧客との関係向上に対して責任を持つようになった。そして現場は賛同し、この変革が長期にわたって定着することを可能にしたのだ。

      結論

       各企業が置かれている状況や企業文化は、もちろん固有のものである。企業が幅広い多面的な変革を設計、実施し管理するための、テンプレート化された唯一の解決策はない。しかし、その適切な順序と構造は常に企業の財務健全性についての深い分析に始まり、自社のビジネスモデルが世界レベルであり続ける(もしくは世界レベルになる)ためにどこに向かうべきか、ということに続く。変革をしばしばコントロールし得る組織や企業文化の現実と同様に、トランスフォーメーションに伴う特徴的なリスク特性も考慮に入れなければならない。出発地点を定めることで、これから待ち受けている変革の大きさと必要な変革のスピードが決まる。そしてそれが、企業価値最大化へのトランスフォーメーションの旅の方向性を示すだろう。

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      First published in 4月 2014
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