Press release
ベイン・アンド・カンパニーの消費者意識調査の結果、
米、英では資金の希望信託先として
アマゾンが伝統的な銀行とほぼ並んで上位入り
ニューヨーク―2018年3月6日 ― 銀行に対して戦いを挑む可能性のあるテクノロジー企業 ―― その急先鋒にいたアマゾンが、若者層および当座預金口座を持たない若者層に向けた当座預金に似た商品の開発について、JPモルガン・チェースおよび他の大手リテールバンクと協議中であると報じられました。この動きは、ここ数年に起こるであろう同社の金融商品への進出の最初の一歩となるかもしれません。ベイン・アンド・カンパニーの調査より、銀行顧客の多くは、業界の根本的な変化を受け入れる準備が十二分に整っていることが分かりました。
ベインは22ヶ国で13万3千人の消費者を対象にした調査を実施し、北米の調査対象者の半数以上、そして、18歳から24歳の調査対象者の約4分の3が、定評のあるテクノロジー企業から金融サービス商品を購入することに抵抗がないということが分かりました。また、最も信頼を得ているテクノロジー企業のトップはアマゾンで、アップルとグーグルとを合わせた3社が上位グループを形成しています。
この調査結果は、伝統的な銀行業界にとっては驚きであるかもしれません。動きの速いフィンテックベンチャーが根本的な変化をもたらすと考えられていたからです。しかしすでに定評のあるテクノロジー企業がより大きな脅威となることはあきらかです。フィンテック企業には革新的な商品があるかもしれませんが、多くの顧客を引き付けるためのブランド認知や販売モデルの構築に苦労しています。大手テクノロジー企業はすでに、ブランド力と顧客とのアクセスが確立されているため、圧倒的に優位な状況にあるのです。
ベインは、アマゾンが北米の銀行業で成功を収める好条件がそろっていると考えています。要因として、顧客が頻繁に物品購入やレビューを行っていること、クレジットカードの登録を含む完全な取引関係が成立していること、顧客のコンピューター・スマートフォン・タブレット・テレビ・ホームオーディオ装置との統合化がなされていること、返品・返金制度も完備されたすぐれたサービスが整っていること、これまでに大きなセキュリティ侵害を発生させていないこと、などが挙げられます。今のところ北米で、胸を張ってこれらの強みすべてが整っていると言えるテクノロジー企業は、アマゾン以外には存在しません。
ベイン南・北アメリカにおける銀行業・支出部門を率いるジェラルド・ドゥ・トワは「アマゾンが銀行業に関心を持つことは私たちの想定内でした」と述べています。「当座預金口座と引き落とし口座が利益を生み出さないことは周知の事実で、口座にほとんど預金がない若者層向けの手数料無料モデルの預金者ではより一層顕著です。たいていの銀行にとって、この若者層市場は好ましい層ではありません。しかし、アマゾンには、参入するのに十分な理由が多数あります。アマゾンの場合は追加投資を殆ど必要とせず展開することが可能で、口座から得られる資金で多くの利益が見込まれるからです。」
アマゾンはこれまで利益を生み出せなかったこの業務へ参入することで、銀行業の経済を一変させる力を持っています。アマゾンには、費用のかかる支店や顧客センターのネットワークの負担(ベイン・アンド・カンパニーの試算では、これが北米の典型的なリテール銀行のコストのおよそ40%を占める)がありません。またアマゾンは、すでに非常に多くの顧客とデジタルでつながっているので、大多数のネット銀行が抱えている顧客獲得のための大規模な費用投下は不要です。
アマゾンはまた、銀行法規制の遵守やバランスシート(貸借対照表)管理の処理を免れることができます。例えば、アマゾンがリテール銀行をパートナーにすれば、そちらに預金を預かってもらい、一方でアマゾンは顧客体験や販売の設計・管理を行うといったことが可能です。
最後に、アマゾンなら顧客はカードの代わりに自分の口座から直接支払えるため便利になり、アマゾンあるいはアマゾンの関連会社は購買ごとに課せられていた手数料を払う必要がなくなります。ベインの概算では、アマゾンは北米だけでも年間2億5千万ドルの売上交換手数料を節約できます。
もしアマゾンが、拡大し続ければ、アマゾンの銀行サービスは今後5年程度で7千万人以上の顧客を持てることが予見されます。これにより、アマゾンは北米で3番目に大きな銀行となり、ウェルズ・ファーゴよりも多くの顧客を持つことになるでしょう。
ドゥ・トワは「アマゾンには銀行業で成功するチャンスが十二分にあり、小売業界に根本的な変化をもたらすでしょう」とコメントしています。「顧客はテクノロジー企業から金融商品を購入する意思を十分示しており、アマゾンは他のテクノロジー企業よりも高い信用を得てきました。アマゾンはすべての必須要素を持っています。デジタルを活用する手腕・多数の顧客・喜ばれる顧客体験を提供できるノウハウ、そして、銀行業へとブランドを拡張するための十分な企業的余裕があります。」
基本的な提携銀行業務を確立した後、アマゾンは着々と、そして確実に、貸付・ローン・物保険および災害保険・資産管理・定期生命保険等、他の金融商品にも参入していくことが予測されます。アマゾンはすでに、ネットショッピングのパターンを通して、結婚から子供の誕生、住居の購入まで、顧客のライフイベントについて知る必要のあることを把握することができます。これは、関連する金融サービス商品の提案に役立ちます。同社は、北米だけではなくインドやメキシコなどの市場でも銀行サービスを始めることも可能です。そうした国々では、調査回答者の80%以上がテクノロジー企業から金融商品を購入したい、と回答しています。
競争力のある分野に磨きをかけ、大手テクノロジー企業の侵略を食い止めるために、リテール銀行はアマゾンから重要なことを3つ学べます。
- 「顧客ファースト」を真剣に考える。商品を押し付けるのではなく、革新的な方法で顧客のニーズをとらえることが重要。
- 委員会で時間をかけて決議するのではなく、もっと迅速に変革、行動する必要がある。
- テクノロジー企業と提携すれば、新しい販売チャンネルを使用することが可能になる。これにより、データ科学や顧客体験設計などの能力を向上させることができる。
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