Press release

2030年における労働環境の展望 高齢化、自動化、格差拡大

2030年における労働環境の展望 高齢化、自動化、格差拡大

過去60年間で最大の破壊的変化が企業に与える8つの影響

  • 2018年2月7日
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2030年における労働環境の展望 高齢化、自動化、格差拡大

世界の企業を巻き込む巨大な嵐が近づきつつあります。高齢化、さらなる自動化、格差拡大が重なり、ここ40年で経験したことのないような破壊的変化が起こる可能性があります。ベイン・アンド・カンパニーのマクロ・トレンド・グループが新たに発表したレポート「2030年における労働の展望:高齢化、自動化、格差拡大の相互作用が引き起こす問題」では2020年代初頭にこれらの3つの問題がもたらすインパクトが引き金となり、数十年にわたる変革が起こる可能性を示しています。ビジネスリーダーは、こうした変化の背景を把握することに努めながら、自分の会社、業界、そして世界経済への影響を検証しなければなりません。

 

マクロ・トレンド・グループのマネジングディレクターで、同レポートを執筆したカレン・ハリスは次のように述べています。「企業や投資家は変化し続ける状況に絶えず対応すべく尽力しています。しかし我々の調査によると、高齢化、自動化、格差拡大という3つの事象により、これから数十年間はボラティリティ(変動性)が非常に高くなることが予測されます。これら3つの事象はときに強め合い、ときに打ち消し合うようにさまざまな形で影響しあい、ビジネス環境における変化の予測を困難にするでしょう」

 

豊富な労働力の時代は終焉へ

1970年代以降、女性の職場進出、中国やインドの対外開放政策、ベビーブーム世代等が支えた豊富な労働人口が経済成長を後押ししてきました。しかし労働人口は縮小しつつあります。世界の大半の国では労働者の高齢化が急速に進み、労働人口の成長率は鈍化しています。例えば米国の場合、ベインの予測では2020年代に労働人口の成長率が年率0.4%に減速すると予測しています。OECD加盟国の労働人口成長率が減速することにより、2030年のGDPが、現在の成長率を維持した場合より約5.4兆ドルも下回る可能性があるのです。

 

多くの市場で総労働人口の伸びが停滞、あるいは減少すると、経済成長の勢いに陰りが出てきます。実際にそうなった場合、各国政府は増大する医療費、老齢年金、多額の債務といった大きな課題に直面することになるでしょう。一方、プラス面として、単純に労働力の供給が減って需要が増えた結果、賃金が抑えられている先進国の低~中程度のスキルの労働者は恩恵が受けられるでしょう。

 

生産性の向上は一つの問題を解決するも、別の問題をもたらす

労働力不足の増大を受けて、企業や投資家は自動化テクノロジーの活用を促進していくでしょう。その結果、2030年の労働生産性は2015年を平均約30%上回り、このインパクトは徐々に大きくなっていくことが予見されます。

 

しかし、経済成長には、生産の伸びに見合う需要が必要です。ベインの分析によると、自動化がもたらす生産性増加のポテンシャルは、生産需要増加のポテンシャルをはるかに上回る見込みです。自動化の急速な普及によって既存雇用の最大20~25%が消滅し(4,000万人の労働者が失職する計算)、それよりはるかに多くの労働者の賃金が低く抑えられるようになる可能性があるのです。

 

自動化による恩恵は、資本家に加えて労働者の約20%(主に高額報酬で高スキルの労働者)だけが享受することができるでしょう。高スキル労働者の不足が進めば、彼らの所得は低スキル労働者と比べてさらに上昇するかもしれません。結果として自動化は、所得格差、ひいては富の格差を大きく広げる可能性をはらんでいると言えます。

 

所得格差が成長を脅かす

格差を生み出す原因はたくさんあります。その1つが高齢化で、一般的に富の格差も拡大します。年齢の高い世帯は、同じ社会経済レベルの若い世帯に比べて、保有財産が多い傾向があります。

 

自動化が所得に与えるインパクトは様々です。ベインの予測では(米国の労働者の20~25%に相当する仕事が自動化によって消滅する)所得が最も低い層が、一番大きな打撃を受けると考えています。自動化がもたらす破壊的変化の影響を最も大きく受けるのは、現在の年収が3万~6万ドルの層で、彼らの最大30%が仕事を失う可能性があります。これに比べると年収6万~12万ドルの層は自動化の影響がやや小さく、年収が12万ドルを超える層ではさらに小さくなります。

 

企業に与える影響

ベインはこれらの変化により、企業が直面する可能性の高い下記8つの影響に対し、どのようなことに注視すべきか示唆を提供しています。

 

  • 見込まれる激しい変動に対し市場モメンタムを注意深く追跡する。経営陣は、レジリエンス(回復力)をより重要な戦略的優先課題だと考え取り組みの優先順位をあげることで、さらに激しくなる事業環境に備えることができます。
  • ミドルクラス市場が縮小する可能性。消費者向けの商品・サービス事業は、社会経済における階層全体を視野に入れて、注意深く地盤を確保する必要があります。2023年位から自動化への投資が減少に転じ、状況が変化する可能性があるためです。
  • 金利の一時的な上昇を予期する。今後10年間は、自動化を推進するための資金需要と人口構成の変化が相まって、国によっては一時的に供給制約型経済になり、金利が上昇する可能性があります。日和見アプローチを採るビジネスリーダーや投資家の場合、対応に遅れをとる可能性があります。
  • 自動化が後押しするブームは10~15年、その後は不況の可能性。これからの10年間で増加する自動化テクノロジーへの新規投資は、すべての大規模な資本投資ブームと同じパターンをたどる見込みです。投資ブームの初期段階では、企業や投資家にとって大きなチャンスが生まれるでしょう。
  • 高スキル、高収入の労働者はますます希少に。不足する人材の争奪戦が激しくなるにつれて、主要企業は希少価値が高まっていく優秀な人材の誘致、育成、維持にこれまで以上に資金を投入し、自社の従業員の生産性を最大限に高めようとするでしょう。
  • ベビーブーマーの支出の伸びは2020年代にピークに達し、その後は漸減。企業や投資家は、今後の10年の終わりにかけて需要の伸びが鈍化する可能性を、他のマクロ経済領域で浮上するリスク要因と併せて意識しておく必要があります。
  • 政府が介入する領域が増加。より厳しい規制や独占禁止法の施行によって、企業やアクティブ投資家には、規模拡大が困難になり、多角化が制限されるといった影響が出るかもしれません。特に大手テクノロジー企業は、消費者に多大な価値をもたらしてきたにもかかわらず、その規模の大きさと競争力のために引き続き厳しい監視を受けるでしょう。
  • 世代間対立が強まる可能性があり、対策に企業も参画。政府の移転支出が特定の集団を他よりも優遇している場合、企業や投資家にとって、支出パターンの変化や事業機会の増減のシグナルになることがあります。例えば労働年齢世帯への移転支出に比重が移った場合、高齢者向けの商品・サービスの事業機会は小さくなるかもしれません。企業、経営陣、さらに株主たちは、年金債務の増加、高スキル労働者の不足、低~中程度のスキルの労働者の雇用喪失や所得減少への対策を求める社会的圧力といった既存の問題に取り組むなかで、政府の移転支出をめぐる協議への参加を求められる可能性があります。

 

ハリスは次のように述べています。「世界経済は、ゆくゆくは一時的な不均衡から回復するでしょう。しかしそこにたどり着くことは容易ではありません。マクロ経済の激動に対応するための公式など、もちろん存在しません。しかし、様変わりしたマクロ経済環境が自社の事業にどう影響し、どのような姿勢で変化に臨むべきか、ということを検証するうえで、各社が打てる現実的な施策はたくさんあるはずです。2020年代以降の激動の時代でも繁栄することが出来る可能性が高い組織とは、衝撃を吸収して素早く進路を変更できる組織なのです」。

さらにマクロトレンドについて知見をご覧になりたい方は英語のレポートになりますがこちらからご覧いただけます。

 

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ベイン・アンド・カンパニー・ジャパン マーケティング/広報

Tel. 03-4563-1103 / marketing.tokyo@bain.com

 

 

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