Press release
ベイン・アンド・カンパニー(以下ベイン、所在地:東京都港区赤坂)は、この度『Global M&A report 2023』を発行しました。
第5回目となる本レポートでは、2023年を見据える企業経営者が、企業価値創出におけるM&Aの役割に依然として大きな期待を寄せていることが明らかになりました。2022年のM&A取引額は前年比マイナス36%と急減したものの、企業成長と収益性向上を達成する上で、ディール活動が企業戦略の中核をなすものであることが確認されました。
本レポートは、M&A実施企業の経営幹部約300人を対象に、ベインが2022年10月に行った調査に基づくものです。2023年のディール件数は前年増とまではいかないまでも、ほぼ同数に達すると予想されています。また、経営幹部は企業価値創出におけるディールメーキングの力を確信しており、過去3年間に完了した買収のおよそ3分の2は期待どおりの、またはそれ以上の成果を出していると報告されています。
ベインの調査によると、戦略的ディール(事業会社によるディール)の取引金額は、ディール件数よりも大きく減少しました。戦略的ディールのマルチプルの中央値は、2021年には過去最高を記録したのに対し、2022年には過去10年間で最も低水準となる11.9倍まで低下しました。マルチプルの落込みは、昨年中頃に見られた超大型ディールの中止と相まって、ディール金額減少の要因となっています。業界別では、テクノロジー、ヘルスケア&ライフサイエンスでの落ち込みが顕著でした。
一方、足元の景気後退は、企業にとってM&A戦略を推進する好機でもあります。買収対象企業・資産は従来よりも安価で入手でき、M&Aを通じてコア事業の強化、あるいは戦略的オプションを創出する機会は目の前にあります。
ベインは2008~2009年の景気後退期における約2,900社のM&A活動を分析し、M&Aに積極的であった企業はそうでない企業を上回る業績を上げていることが明らかになりました。これはM&Aを積極的に実施した企業の株主利益率の高さからも判断することができます。
ベインのグローバルM&A プラクティスのリーダーであるLes Bairdは「世界のM&A市場は、2022年の前半5か月は、コロナ禍以前と同水準にありましたが、2022年6月に市場は転換期を迎え、多くの企業がM&Aの中断を余儀なくされました。過去の景気後退サイクルで得た知見から、2023年は、買収の準備を整えている企業にとって、大胆かつ戦略的なM&Aに出る機会が増えることが予想されます。ベインの経験では、不透明な時期においては、先を見通した、より入念なデューディリジェンスが、M&Aの成否を左右します」と述べています。
2022年下半期のM&A市場の減速の方向性を決定付けたのが、マクロ経済の状況と、米連邦準備銀行による金利引き上げです。市場がリセットされたことで、M&Aのトレンドにおける予期せぬシフトが発生しました。
本レポートでは、2023年に注目すべき5つのM&A要素について考察しています。
• キャッシュリッチ企業がとる大胆かつ戦略的な動き
• 引き続きトレンドが続く中小規模ディール
• スケールとスコープディールのバランス
• バリュエーションに対し課せられるさらなるプレッシャー
• 企業における部門売却・分割を通じたポートフォリオ再編
本レポートでは、M&Aを通じたイノベーションの拡大、先を見通した、かつ入念なデューディリジェンスによるスピードと質の向上、企業文化の相違への対応を通じた統合後の企業価値維持の実現といった企業のM&A事例を複数紹介しています。また、ヘルスケア、エネルギー、産業財を含む14の業界別の視点と、日本をはじめとする4つの国別の詳細な分析も含まれています。
産業財セクターにおけるESG関連ディール
産業財セクターにおける2022年のM&Aがディール金額、件数ともに減少する中、環境および社会的目標実現を目指す企業は、ESGを中心テーマとしたM&A買収を増加させています。M&Aの価値をESGのパラメータで定量化することは困難ですが、ベインでは、今や産業財セクターにおけるディールの10件に1件はESG要素を含むと推定しています。本レポートでは、ESG関連ディールを2つに分類して整理しました: ①より環境に優しく有望な市場セグメントに迅速にアクセスするための隣接事業の買収、 ②自社が掲げるESG目標の実現を見据えた生産・製造能力向上のための買収。こうしたトレンドは2023年も継続すると考えられます。
自社でのケイパビリティ構築ではなく、「買収」によるエンジン2(新しい成長の柱となる事業)の獲得
社会の激変期においては、企業経営者は将来を見据えた新たな成長エンジンの開発・加速が重要であると理解しています。ベインの最新の調査では、新規ビジネスをゼロから構築するのではなく、他社から買収することが有効であることが立証されました。過去25年間の数百件に上るエンジン2ビジネスを分析した結果、最も成功を収めたエンジン2ビジネスの3分の2はM&Aを事業拡大の主軸としていました。必要なケイパビリティやチームを自社で構築するのと比較し、買収はより迅速かつ安価、そしてより効果的です。
ディールメーカーはM&A市場の周期性を熟知しています。買収企業、被買収企業双方のコア事業に影響を及ぼす景気後退局面でも、M&Aを中断せず、むしろ好機と捉えて事業再編に取り組んでいる企業が成功を収めていることが度々確認されています。
日本では、M&A市場全体の落ち込みと連動して、2021年にみられた、事業ポートフォリオ再編を目指す「変革型」M&Aや、祖業の売却のようなトレンドは目立たなくなりました。グローバル市場と同様、案件は小型化し、大規模なクロスボーダー案件も減少しました。
一方、このようなトレンドが今後も継続するのかどうかでいうとベイン東京オフィスのパートナーの大原崇は次のように予測しています。「今は一時的な“一服”であり、 日本のM&A市場は再燃するでしょう。日本企業が抱える成長戦略の具体化、という難しい課題に対しては、引き続き答えを出す必要があります」。
業界を代表する様々な日本企業の現在進行中の中期事業計画をベインが分析したところ、M&Aを含めた成長投資の金額の枠が“未消化”になっているケースが非常に多いことがわかりました。また、上場企業のキャッシュ(円ベース)は、為替効果も否定できないながらも、ここ5年で最高の水準まで積みあがっています。アクティビストに代表されるように、高まりつつある資本市場のプレッシャーも踏まえると、日本企業が還元も投資もせずにキャッシュを抱え続けることは、これまでよりも格段に難しくなっています。
また、M&A市場で重要な役割を持つPEファンドも、日本では、低金利を背景として世界の中でも極めてユニークに活発であり、今年も大きなマクロ環境の変化がない限り、活発な活動が続くと見られます。
『Global M&A report 2023』フルレポートはこちら(英語)
https://www.bain.com/ja/insights/topics/m-and-a-report/
日本M&Aレポート『M&A in Japan: Pressing Pause on Transformative M&A』はこちら(英語)
https://www.bain.com/ja/insights/japan-m-and-a-report-2023/
本件についてのお問い合わせ先
ベイン・アンド・カンパニー マーケティング/広報
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ベイン・アンド・カンパニーについて
ベイン・アンド・カンパニーは、未来を切り開き、変革を起こそうとしている世界のビジネス・リーダーを支援しているコンサルティングファームです。1973年の創設以来、クライアントの成功をベインの成功指標とし、世界40か国65都市にネットワークを展開しています。クライアントが厳しい競争環境の中でも成長し続け、クライアントと共通の目標に向かって「結果」を出せるように支援しています。私たちは持続可能で優れた結果をより早く提供するために、様々な業界や経営テーマにおける知識を統合し、外部の厳選されたデジタル企業等とも提携しながらクライアントごとにカスタマイズしたコンサルティング活動を行っています。また、教育、人種問題、社会正義、経済発展、環境などの世界が抱える緊急課題に取り組んでいる非営利団体に対し、プロボノコンサルティングサービスを提供することで社会に貢献しています。
商号 : ベイン・アンド・カンパニー・ジャパン・インコーポレイテッド
所在地 : 東京都港区赤坂9-7-1 ミッドタウン・タワー37階
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