Press release
戦略コンサルティングファームであるベイン・アンド・カンパニー・ジャパン・インコーポレイテッド(以下ベイン、所在地:東京都港区赤坂)は「ベイン・アンド・カンパニーからの提言【先進事例から見る生成AI導入に向けた日本企業への示唆】」と題したプレスセミナーを2023年8月25日(金)に実施いたしました。
■スピーカー
パートナー 安達 広明
シニアマネージャー 岡 太朗
■ 本会のキーポイント
• 生成AIの登場は、革新的な技術を使いこなすことで事業競争力を強化できる千載一遇のチャンス
• 先進企業による生成AIの独自活用は、すでに概念実証から本格活用のフェーズへと移行しつつある
• これらの先進企業へのキャッチアップは可能。生成AIの可能性に関する様々な「誤解」を払拭し、いち早く本格検討に着手することが条件
• 先行する企業は、そうでない企業に対して、今後埋めることのできない持続的な競争優位性を構築可能
■開催の背景 ─ ベイン・アンド・カンパニーとOpenAI社
戦略コンサルティングを行うベインが、生成AIをテーマにしたセミナーを行うに至った大きな理由としては、生成AIのリーディングカンパニーであるOpenAI社との提携が挙げられます。この提携は他社に先駆けて今年2月から開始しており、ベインは世界中のクライアントが AI の価値を最大限に活かし、企業のポテンシャルを最大化させることができるように支援しています。今回のプレスセミナーでベインは、これらの活動から得られた生成AIに関する知見についてメディアに向けて紹介しました。
■革新的な商品やサービスを提供する「ビジョナリー」企業を目指すべき
セミナーの冒頭で安達は、生成AIは先進企業において本格活用のフェーズへ移行しつつあるが、まだ未着手の企業でもキャッチアップは十分に可能であると述べました。そのためには、生成AIに関する様々な「誤解」を払拭することが必須条件であり今後の分かれ道であると強調しました。また、競争優位性を構築するためにも、自社のケイパビリティと生成AIのポテンシャルを掛け合わせ、独自のユースケース(使い方)を開発・実装するような「ビジョナリー」企業を目指すべきであると主張しました。
続いて、「ビジョナリー」企業を目指し、概念実証から本格活用へ移行しているベインが支援している企業のケース事例として、コカ・コーラ社によるコンシューマ向けキャンペーン「Real Magic」を例に挙げました。わずか3週間で実装に至ったこのキャンペーンは、広告のコピーやクリエイティブの作成に生成AIを活用するという、マーケティング改革の好例です。
■生成AIの企業活用における3つの「誤解」
続いて、日本企業を含め、生成AI活用の議論をする上で浮かび上がってきた「誤解」を安達は3つ紹介し、その誤解を解消する手段について事例を交えながら解説しました。特に「精度や用途に関する誤解は非常に深刻」とし、生成AIのポテンシャルを狭く考えることなく、誤解を払拭してほしいと語りました。
誤解①「生成AIの回答の精度は、企業利用に耐えうるレベルではない」
この誤解・不安に関して安達は、先進企業の複数のユースケースにおいて実用レベルに到達していると見解を示しました。しかし、「なんの工夫もしないでそのまま使ってしまうと、単なる便利ツールであり、仕事で本格的に使おうとすると、かゆいところに手の届かない使い勝手の悪いツールになってしまい、誤解が深まってしまう」と付け加え、精度を上げるための工夫の必要性を説きました。
この誤解を解く事例として、大手運送企業の調査が挙げられます。調査によると、生成AIを用いたチャットボットは、顧客からの問い合わせに対する回答がオペレーター並みの水準であり、既に実用レベルに達していることが明らかになっています。
次に、岡が実用レベルの精度を実現するための作り込みについて紹介しました。プロンプトの設計だけでなく、前後の工程でもGPTを複数回活用して作り込むことで回答精度を大幅に向上させることが、技術検証では重要だと強調しました。前述の運送会社の例では、問い合わせに対して、どのデータベースを参照し、どのような情報を取得するのかをシステムに指示する必要があります。このデータベースの絞り込みを行う際に、顧客の質問の解釈や分類をGPTにさせることで、検索エンジン自体の性能を上げ、GPTの回答精度を向上させることが可能です。
誤解②「生成AIは定量分析・数字や予測に弱く、用途が限られる
生成AIは文字情報に強い反面、定量分析や数字に弱く、高度な予測や提案は難しいという誤解は、他の技術によって生成AIの能力を拡張することで払拭できます。この点について岡は、GPTはテキスト入力しか扱えないことは事実だが、OCR等を用いて画像をテキストに変換することで、GPTの扱える情報の幅を広げることができると説明しました。さらに、予測AIや音声AI、オープンソースライブラリといった既存の技術と組み合わせることで、お互いの得意領域を活かしたユースケースが実現可能となります。
誤解③「とにかく使いはじめてみれば、何か見えてくるはず」
3つ目の誤解について岡は、生成AIを利用したアプリケーションを活用する際、多くの企業が「やりやすそうなところから小さく始める」といった動きになりがちであると指摘しました。しかし、それでは「とりあえず生成AIを使い始めてみたのはいいものの、ビジネス上のインパクトはあまり出なかった」という結論になってしまう危惧があります。実装前に、大きなインパクトが期待される領域を検討し、将来的に目指したい姿から逆算して考えていくことが極めて重要です。将来的な競争優位を創り出すためのロードマップを描き、第一歩を逆算することが実際に支援を行う際にも肝要であると岡は語りました。
■生成AIの活用による企業競争力の強化へ、一歩踏み出すことが重要
この3つの誤解を乗り越えたその先には、先行優位が累積的に積み上がり、大きなギャップが生まれると安達は示唆しました。生成AIについて安達は「人の動き方が変わっていく技術だと認識している」とし、「導入の検討を早く進めれば進めるほど、会社全体の競争力や従業員も含めたユーザーの動き方も併せて変わってくる」と主張しました。下図が示すように、他社に先んじて技術的知見を獲得・蓄積し、技術検証と実際の活用を進めることで利用データを蓄積し、更なる精度向上、新たなユースケース検討が可能になり、それが効果的な投資判断や事業戦略へ反映される、というサイクルが回り、大きな競争優位性を構築することができます。
セミナーの最後に安達は、生成AIのような新技術が登場した後、一歩踏み出すか否かが企業の経営上非常に大きな分かれ道となると締めくくりました。
本件についてのお問い合わせ先
ベイン・アンド・カンパニー マーケティング/広報
Tel. 03-4563-1103 / marketing.tokyo@bain.com
ベイン・アンド・カンパニーについて
ベイン・アンド・カンパニーは、未来を切り開き、変革を起こそうとしている世界のビジネス・リーダーを支援しているコンサルティングファームです。1973年の創設以来、クライアントの成功をベインの成功指標とし、世界40か国65都市にネットワークを展開しています。クライアントが厳しい競争環境の中でも成長し続け、クライアントと共通の目標に向かって「結果」を出せるように支援しています。私たちは持続可能で優れた結果をより早く提供するために、様々な業界や経営テーマにおける知識を統合し、外部の厳選されたデジタル企業等とも提携しながらクライアントごとにカスタマイズしたコンサルティング活動を行っています。また、教育、人種問題、社会正義、経済発展、環境などの世界が抱える緊急課題に取り組んでいる非営利団体に対し、プロボノコンサルティングサービスを提供することで社会に貢献しています。
商号 : ベイン・アンド・カンパニー・ジャパン・インコーポレイテッド
所在地 : 東京都港区赤坂9-7-1 ミッドタウン・タワー37階
URL : https://www.bain.co.jp