Press release

ベイン・アンド・カンパニーからの提言 「日本企業のPBR改善取り組みの課題と企業価値向上のための取締役会」

ベイン・アンド・カンパニーからの提言 「日本企業のPBR改善取り組みの課題と企業価値向上のための取締役会」

  • 2024年2月21日
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ベイン・アンド・カンパニーからの提言 「日本企業のPBR改善取り組みの課題と企業価値向上のための取締役会」

戦略コンサルティングファームであるベイン・アンド・カンパニー・ジャパン・インコーポレイテッド(以下ベイン、所在地:東京都港区赤坂)は「ベイン・アンド・カンパニーからの提言【日本企業のPBR改善取り組みの課題と企業価値向上のための取締役会】」と題したプレスセミナーを2024年2月14日(水)に実施いたしました。

東京証券取引所の「PBR1倍割れ改善要請」に端を発し、企業価値向上に向けた取り組みの定期的な開示も2024年1月から始まり、上場企業による取り組み加速が2024年の日本市場全体の底上げの鍵を握ることは間違いありません。財務専門家による一時的・表層的な取り組みに終始せず、本質的な経営改革にまで踏み込んだ進化が求められます。

今回のプレスセミナーでは、知見と経験の豊富な3名の登壇者が、PBR改善を効果的に進めるための科学的・実践的手法を分かりやすくご紹介するとともに、企業価値向上をリードする取締役会の在り方・役割について、社内外の取締役や機関投資家など40名以上のビジネスリーダーへのインタビューから得られた最新の洞察をもとにご紹介しました。

■PBR1倍割れ改善への機運と取締役会の重要性

 セミナーの冒頭、ベイン・アンド・カンパニー東京オフィスでパートナーを務める鈴木祐太が、東京証券取引所の「PBR1倍割れ改善要請」に端を発して、様々な企業がPBR改善の取り組みを進めている状況を受け、資本市場でも日本企業への期待が高まっていくのではないかと述べました。その上で「PBR改善の期待に応えるためには、取締役会の役割は大きい」と重要性を強調しました。

■PBR改善を効果的に進めるための科学的・実践的手法

 鈴木は、PBR1倍割れの意味を日本企業の経営者は正確に理解できていないのではないか、という課題意識に基づき、実態として何を意味しているのかを平易な言葉で解説いたしました。

image994g7.png企業の価値を計る方法は取引価値(時価総額)や事業価値、清算価値など多岐にわたります。PBRは、取引価値と清算価値に着目し、企業価値を評価するという指標です。株価と総発行株式数を掛け合わせた取引価値(Price)と、会社の事業を清算した際に残る資産である清算価値(Book)が同値になるとき、PBRは1倍となります。したがって、「PBR1倍割れ」という状況は、資本市場から企業・経営者への「落第」評価と同義であり、企業の存在意義をも疑わせる重篤な状態であると捉えられると鈴木は解説しました。

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 しかしながら、TOPIX 500のうち43%の企業がPBR1倍割れ、つまり4割強が「落第」状態という状態にあり、これはアメリカや欧州に比べると圧倒的に高い数値です。日経平均株価の上昇に注目が集まっている現在、実態を伴った日本経済の活性化のためにもPBRを1倍以上にしていく改革は早急になされるべきであると鈴木は主張しました。

■資本市場の声は「変革の梃」、取締役会は「企業価値の守護者」

image1c9sq.pngPBRを向上させるためには、PBRを解釈することから始める必要があります。鈴木はPBRを「稼ぎの品質(ROE)」と「経営の品質(PER)」に分解し、セミナー内では主に「稼ぎの品質(ROE)」に焦点を当てて解説いたしました。ROEを構成する収益性(PLの質)、資産効率(BS左側の質)、財務レバレッジ(BS右側の質)を自社のパフォーマンスと他社のパフォーマンスで比較をすることで、改善すべき点が浮き彫りになりデータに則した議論が可能となります。

しかしながら、PBR改善へ動き出した企業が取る行動としてよくあるのが、手のつけやすい、本質的ではない要素へのテコ入れであると鈴木は語ります。そこで、投資家や株主、アナリストとの対話を通じて資本市場の声を取り入れることが重要です。資本市場を味方につけ、アドバイスを受けた上で企業戦略を再考するというサイクルを回すことが、大きな壁、すなわち日本企業が変革をする際にありがちな硬直化した社内の説得や内向き思考を打破する一手になると鈴木は考察しています。

社内における株主ともいえる取締役会は、資本市場の声を「変革の梃」として積極的に取り入れることで、「企業価値の守護者」としての重要な役割を果たすことが出来ると鈴木は締めくくりました。

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■企業価値向上をリードする取締役会の在り方・役割

続いて、ベイン・アンド・カンパニー東京オフィスでパートナーを務めるパーキンス薫が、企業価値を向上させるために取締役会が備えるべき要件について解説しました。

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日本が全盛期だった1980年代後半、世界の時価総額トップ50社のうち32社は日本企業だったにもかかわらず、2023年時点では1社しかランクインしていません。日本企業の時価総額は上昇していますが、それを上回るペースでアメリカや中国の企業は成長し、インド企業の新規参入も加速しています。しかしながら、近年では、円安などの影響により、日本企業の価値上昇の可能性はウォーレン・バフェット氏などの海外投資家やアクティビストからの注目を集めており、日本企業の評価は上昇傾向にあるとパーキンスは分析しました。一方で、日本、アメリカ、中国の売上高ランキングトップ30社を比べると、日本企業の手元資金はアメリカと中国の約2倍です。これは、リスク管理には対応できる一方、持続可能な企業価値の成長には消極的であるといえるとパーキンスは解説しました。

 日本企業の国際競争力強化の一環として2015年に導入されたコーポレートガバナンス・コードは、高い水準で遵守されています。しかし、国別に取締役を見ると、日本は平均年齢が最も高く、外国人比率が最も低いなど、偏りが見られるとパーキンスは指摘しました。ある女性の社外取締役は、日本の取締役の大半は、男性中心の「オールドボーイズネットワーク」であり、自分の周囲を、異論を唱えない人々で固めたがる傾向にあるため、ネットワーク外からの指摘や圧力が不十分であると鋭い指摘をしたという実体験をパーキンスは語りました。

 このような状況を踏まえて、ベイン・アンド・カンパニーは、日本企業における取締役会の実効性を向上させるために必要な要件について、CXOや社外取締役、機関投資家など40名以上のビジネスリーダーに対するインタビュー調査をボードアドバイザーズと共同で実施しました。さらにこの調査結果や他国の取り組みを踏まえ、レポート『日本企業の進化を加速させる取締役会のボードアジェンダ』を発表し、その中で「価値創造型取締役会の7つの要諦」にまとめました。

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 7つの要諦のうち、パーキンスが強調したのが、中長期的なトレンドが自社に与える影響を適切に把握し価値を最大化させる「本社主導のフルポテンシャル戦略」、それを実行する具体的な「価値創造プランの策定」、市場へ説得力のある「エクイティ・ストーリー」の提供です。これらを取締役が投資家などのステークホルダーから受けている期待に応える責任「フィデューシャリー・デューティー(受託者責任)」として果たしていくことが重要です。しかし、インタビュー調査を通して、多くのビジネスリーダーが日本企業にはフィデューシャリー・デューティーが欠如していると指摘しています。コーポレートガバナンスの力を効果的に高め、ステークホルダーへ優れた価値創造をするためにも、調査を通して見えてきた7つの要諦を踏まえることが重要だとパーキンスは締めくくりました。

 

【本件についてのお問い合わせ先】

ベイン・アンド・カンパニー マーケティング/広報

Tel : 03-4563-1103

Mail: marketing.tokyo@bain.com

ベイン・アンド・カンパニーについて

ベイン・アンド・カンパニーは、未来を切り開き、変革を起こそうとしている世界のビジネス・リーダーを支援しているコンサルティングファームです。1973年の創設以来、クライアントの成功をベインの成功指標とし、世界40か国65都市にネットワークを展開しています。クライアントが厳しい競争環境の中でも成長し続け、クライアントと共通の目標に向かって「結果」を出せるように支援しています。私たちは持続可能で優れた結果をより早く提供するために、様々な業界や経営テーマにおける知識を統合し、外部の厳選されたデジタル企業等とも提携しながらクライアントごとにカスタマイズしたコンサルティング活動を行っています。また、教育、人種問題、社会正義、経済発展、環境などの世界が抱える緊急課題に取り組んでいる非営利団体に対し、プロボノコンサルティングサービスを提供することで社会に貢献しています。

商号  : ベイン・アンド・カンパニー・ジャパン・インコーポレイテッド
所在地 : 東京都港区赤坂9-7-1 ミッドタウン・タワー37階
URL   : https://www.bain.co.jp