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現場と対話重ね問題改善 ~企業成長に導く「従業員エンゲージメント」~

現場と対話重ね問題改善 ~企業成長に導く「従業員エンゲージメント」~

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現場と対話重ね問題改善 ~企業成長に導く「従業員エンゲージメント」~
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従業員の会社への愛着心や、仕事を通して会社に貢献する熱意のことを、ベイン・アンド・カンパニーでは「従業員エンゲージメント」と呼んでいます。どれだけ従業員を「巻き込めて」いるか、と言い換えてもよいでしょう。ベインの調査では、従業員エンゲージメントが同業他社に比べてより高い企業は、顧客からの支持も高く、結果としてより高い成長率を実現できることが分かっています。エンゲージメントの向上は、安定した職場環境の実現、生産性の向上、製品の品質向上といったような、様々なメリットをもたらします。

このように聞くと、日本企業で従来から行われてきた「愛社精神の発揚」や「士気向上」のことと捉えられるかもしれません。誤りではありませんが、従業員エンゲージメントとは、そうしたメリットを獲得するためにどのような施策を実施すべきかを経営の最重要課題として考え、明確な目的意識を持って取り組むものです。皆さんの会社では、目的意識が不明確なまま精神論やお題目に終始し、実際のメリットを得られずに放置していませんか。

従業員エンゲージメントは、従業員満足とも異なるものです。一方的に会社から与えられる福利厚生や給与、インセンティブは、従業員が安心・納得して働くための必要条件ではありますが、より積極的に会社に貢献する熱意やコミットメントを引き出すには、それ以上の取り組みが必要です。

では、従業員エンゲージメントを高めるためにはどうすればよいでしょうか。従業員エンゲージメントが高い企業にみられる5つの共通点を紹介します。


①人事部門ではなく現場リーダーが主導する

現場の管理職が積極的に動くことで、何が現場でエンゲージメントを高める障害となっているかを洗い出し、オープンな議論を通して解決策をつくることができます。

②現場リーダーが部下と率直な会話ができるようお膳立てをする

従業員の率直な生の声を集める無記名アンケートのような仕組みづくりが必要です。現場の管理職がそうした声に基づいて問題を把握し、解決策を提示するためには、ロールプレイや経験共有によるスキルアップが必要です。

③顧客志向を徹底する

顧客接点の多い部署の従業員エンゲージメントは、他部門よりも低くなる傾向がありますが、改善した場合には大きなインパクトが期待できます。熱心なサービス提供を通して顧客からの支持を多く獲得でき、企業成長に貢献するためです。顧客からの支持を得るために何をすべきか、最前線の現場の従業員からのアイデアに耳を傾け、きちんと答えることが大変重要です。

④従業員のセグメントごとに最適なアクションをとる

従業員エンゲージメントの向上において画一的なアプローチは禁物です。国籍、世代、性別、雇用形態など、従業員の多様性が増す中で、現場リーダーがこうした特性を理解し、適切なアクションを導き出すことができるよう、スキルアップを図ることが重要です。

⑤指標やスコアでなく、対話を重視する

従業員エンゲージメントの改善度合いについて継続的に評価できるよう、数値化することに意味はあります。ただ、数値を追いかけすぎると本質を見失って小手先の施策に頼るようになり、かえって従業員の信頼を失います。現場の従業員との対話を通して、根本要因にアプローチし、真摯に改善を図ることが第一です。


これらすべてを実践するには、自社の経営判断として何をゴールとして設定するのか、この活動にどれだけ経営資源を割り当てるか、効果をどのように測定し評価するかなど、入念な検討と準備が必要となります。しかし現場リーダーの立場ですぐにできることもあります。それはチームメンバーと対話を始めることです。

ベインでは、数人程度のプロジェクトチームで仕事を進めますが、毎週チームメンバーに匿名でアンケートを取っています。「このチームで働くことを友人に薦めたいと思いますか」「それはなぜですか」「どうしたら改善できますか」といったいくつかの質問に対する回答に基づき、各自がどのように仕事のやり方を見直せばよいかについて討議しています。提案が合理的な場合は可能な限りすぐ実行に移し、そうでない場合はなぜそうすべきでないのかを説明して納得してもらうことが重要です。

従業員エンゲージメントは単なる人事課題ではなく、経営の根幹にかかわる課題です。会社側や管理職が何かを与え従業員が受け取る、という一方通行では成り立ちません。顧客にすぐれた製品やサービスを提供するために、現場リーダーとメンバーが一緒に改善に取り組むというコラボレーションが不可欠です。ぜひ試行錯誤を通して取り組みを進化させながら、ビジネス上の成果に結び付けていただきたいと思います。

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